永久歯/斜走隆線(しゃそうりゅうせん)/プロトコヌーレ/メタコーレ

こんにちは。きりん(@kirinaccount)です。

 

引用しています「歯の解剖学 歯科技工学」 は歯型彫刻がテーマの書籍です。

・カラベリー結節

・斜走隆線

・プロトコヌーレ

・メタコーレ

 

(大臼歯にみられるさまざまな諸形態)についてつづっています。

 

 

 

 

 

            目次

          1.上顎切歯(じょうがくせっし)

          2.下顎切歯(かがくせっし)

          3.犬歯(けんし)

          4.小臼歯(しょうきゅうし)

          5.大臼歯(だいきゅうし)

          6.大臼歯プロトコヌーレ

 

 

 

 

永久歯(えいきゅうし)


    切歯(せっし)


  切歯(incisor)は上下顎歯列(じょうげがくしれつ)の全部中央にある2対8本の歯で、6~8歳頃に乳切歯(にゅうせっし)と交換する代生歯(だいせいし)です。

  正中線(せいちゅうせん)に近い歯を中切歯(ちゅうせっし)、遠心位(えんしんい)にあるものを側切歯(そくせっし)、食物を捕え、かみ切る役割りをもち、発音や容貌(ようぼう)の調和(ちょうわ)にも関与します。


   切歯(せっし)は、唇舌的(しんぜつてき)に圧平(あっぺい)されたのみ状を呈した(ていした)歯冠(しかん)と1本の円錐状(えんすいじょう)の歯根(しこん)からなります。


  1.歯冠(しかん)
   外形(がいけい)は圧平(あっぺい)されたのみ状を呈し(ていし)、不正方形(ふせいほうけい)の唇側面(しんそくめん)、舌側面(ぜっそくめん)と、縦に長い二等辺三角形の近心面(きんしんめん)、遠心面(えんしんめん)の4つの面をもちます。

   唇側面(しんそくめん)と舌側面(ぜっそくめん)は、斜め(ななめ)に合して(がっして)切縁(せつえん)(incisal margin)を形成(けいせい)します。

  1)唇側面(しんそくめん)
   唇側面(しんそくめん)は近遠心(きんしんえん)、遠心縁(えんしんえん)、切歯(せっし)および歯頸縁(しけいえん)の4つの縁(えん)をもち、外形(がいけい)は切縁(せつえん)を底辺とする縦に長い台形です。

   切縁(せつえん)と近心縁(きんしんえん)はほぼ直線的(ちょくせんてき)であるが、遠心縁(えんしんえん)はやや側方(そくほう)に凸彎(とつわん)します。


   切縁(せつえん)は歯の長軸(ちょうじく)に対して、遠心側(えんしんそく)に向かって(むかって)わずかに歯頸側(しけいそく)に傾斜(けいしゃ)しています。


   こちらの傾斜(けいしゃ)と遠心縁(えんしんえん)の凸彎(とつわん)のために、切縁(せつえん)と遠心縁(えんしんえん)とでつくる遠心切縁隅角(えんしんせつえんぐうかく)(distoincisal angle)は、切縁(せつえん)と近心縁(きんしんえん)でつくる近心切縁隅角(きんしんせつえんぐうかく)(mesioincisal angle)に比べて丸みを帯び鈍円(どんかく)となります。

   すなわち、唇側面(しんそくめん)からみると近心切縁隅角(きんしんせつえんぐうかく)が鋭く(するどく)突出(とっしゅつ)しているのに対して、遠心切縁隅角(えんしんせつえんぐうかく)は鈍角(どんかく)であり、隅角徴(ぐうかくちょう)がよく表れています。


   唇側面(しんそくめん)は切縁歯頸側方向(せつえんしけいそくほうこう)(垂直方向)および近遠心方向(きんえんしんほうこう)(水平方向)(すいへいほうこう)に軽度(けいど)に豊隆(ほうりゅう)しています。
   豊隆(ほうりゅう)の程度(ていど)は、切縁歯頸側方向(せっししけいそくほうこう)より近遠心方向(きんえんしんほうこう)のほうが強く、また、遠心半部(えんしんはんぶ)より近心半部(きんしんはんぶ)のほうが強いため、唇側(しんそく)の近心半(きんしんはん)は唇側(しんそく)に突出(とっしゅつ)しており彎曲徴(わんきょくちょう)を示します。


   こちらは隣接面(りんせつめん)および切縁(せつえん)から観察(かんさつ)するとよくわかります。


   唇側面(しんそくめん)には縦に走る3本の唇側面豊隆(しんそくめんほうりゅう)(近心(きんしん)・中心(ちゅうしん)・遠心唇側面豊隆(えんしんしんそくめんりゅうせん))と、そちらの間に2本の浅い(あさい)唇側面溝(しんそくめんこう)(近心(きんしん)・遠心唇側面溝
(えんしんしんそくめんこう))があります。


   なお、切縁(せつえん)には3個の切縁結節(せつえんけっせつ)(mamelon)とよびます。
軽度(けいど)な弧状(こじょう)の隆起(りゅうき)が1列に並んで(ならんで)いますが、萌出後数年(ほうしゅつごすうねん)で咬耗(こうもう)のため消失(しょうしつ)し、唇側切縁(しんそくせつえん)と舌側切縁(ぜっそくせつえん)が形成(けいせい)されて切面(せつめん)となります。


   2)舌側面(ぜっそくめん)


    舌側面(ぜっそくめん)は、近心縁(きんしんえん)と遠心縁(えんしんえん)が歯頸側(しけいそく)に向かって強く(つよく)収束(しゅうそく)し、両縁(りょうえん)はほぼV字形となります。そちらの結果(けっか)、舌側面(ぜっそくめん)の外形(がいけい)は切縁(せつえん)を底辺(ていへん)とする三角形(さんかくけい)に近く(ちかく)なります。

    したがって、歯冠(しかん)を舌側面(ぜっそくめん)から観察(かんさつ)すると、舌側面(ぜっそくめん)だけでなく隣接面(りんせつめん)の一部(いちぶ)がみえることになります。 

 


    舌側面(ぜっそくめん)の近心縁(きんしんえん)、遠心縁(えんしんえん)および歯頸縁(しけいえん)は線状(せんじょう)にかなり強く(つよく)隆起(りゅうき)しており、それぞれ近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)、遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)、基底結節(きていけっせつ)(basal cusp、cingulum)とよびます。
    こちらのような(上記)の隆起部(りゅうき)に囲まれた中央部(ちゅうおうぶ)の凹窩(おうか)を舌側面窩(ぜっそくめんか)(lingual fossa)といい、基底結節(きていけっせつ)から切縁(せつえん)に向かって舌側面窩(ぜっそくめんか)に延びる(のびる)1~3個の棘状(とげきょう)の小さい(ちいさい)突起(とっき)を、棘突起(ちょくとっき)とよびます。なお、近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)と遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)の形態(けいたい)、走行(そうこう)にはやや相違(そうい)があり、近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)は直線的(ちょくせんてき)で幅が狭く(せまく)鋭い(するどい)が、遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)は彎曲(わんきょく)しており太く(ふとく)て鈍い(にぶい)です。


   舌側面窩(ぜっそくめんか)は平坦(へいたん)ではなく、そちらの底部(ていぶ)には縦(たて)に走る(はしる)低くて(ひくくて)鈍い(にぶい)3本の舌側面隆線(ぜっそくめんりゅうせん)(近心(きんしん)・中心(ちゅうしん)・遠心舌側面隆線(えんしんぜっそくめんりゅうせん))と、そちらの間に2本の浅い舌側面溝(ぜっそくめんこう)(近心(きんしん)・遠心舌側面溝(えんしんぜっそくめんこう))があります。


  3)隣接面(りんせつめん)
  隣接面(りんせつめん)の外形(がいけい)はほぼ二等辺三角形(にとうへんさんかっけい)で、唇側縁(しんそくえん)、舌側縁(ぜっそくえん)、歯頸縁(しけいえん)の3つの縁(えん)をもちます。

  唇側縁(しんそくえん)は軽度(けいど)に凸彎(とつわん)し、舌側縁(ぜっそくえん)は中央部(ちゅうおうぶ)は凹彎(おうわん)しますが歯頸縁(しけいえん)は基底結節(きていけっせつ)に一致(いっち)して突隆(とつりゅう)します。


   隣接面(りんせつめん)は平面(へいめん)ではなく長軸方向(ちょうじくほうこう)および
唇舌方向(しんぜつほうこう)に豊隆(ほうりゅう)しており、そちらの膨らみ(ふくらみ)方(かた)は近心面(きんしんめん)より遠心面(えんしんめん)のほうが強いです。
   また、隣接面(りんせつめん)の面積(めんせき)は遠心面(えんしんめん)よりも近心面(きんしんめん)のほうが広く、歯面徴(しめんしょう)を示します。

 

 

 


   2.歯頸部(しけいぶ)
   歯頸線(しけいせん)は、唇側(しんそく)と舌側(ぜっそく)では歯根側(しこんそく)に向かって(むかって)強く(つよく)弓状(きゅうじょう)に凸彎(とつわん)し、隣接面(りんせつめん)では歯冠側(しかんそく)に向かってV字形に凸彎(とつわん)します。

   隣接面(りんせつめん)の凸彎(とつわん)の程度(ていど)は遠心面(えんしんめん)より近心面(きんしんめん)のほうが強いです。


   歯根歯頸部(しこんしけいぶ)(歯頸線(しけいせん)の最も(もっとも)歯根側(しこんそく)に突出した部分)の水平断面(すいへいだんめん)は、三角形(さんかっけい)から長楕円形(ちょうだえんけい)です。

 

 

 

  3.歯根(しこん)
  歯根(しこん)は、長い(ながい)円錐形(えんすいけい)、または近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)された板状(ばんじょう)の単根(たんこん)です。
  多くの場合、近心面(きんしんめん)には縦(たて)に走る(はしる)根面隆起(こんめんりゅうき)が、遠心面(えんしんめん)には縦(たて)に走る(はしる)根面溝(こんめんこう)がみられます。
  歯を唇側(しんそく)から観察(かんさつ)すると、歯根長軸(しこんちょうじく)の延長線(えんちょうせん)と切縁(せつえん)がつくる角度(かくど)は一般(いっぱん)に近心側(きんしんそく)では鈍角(どんかく)、遠心側(えんしんそく)では鋭角(えいかく)です。

 

 

 

  こちらの特徴(とくちょう)は、切縁(せつえん)が遠心側(えんしんそく)に向かって(むかって)歯頸側(しけいそく)に傾斜(けいしゃ)しているために生じた現象で、切縁(せつえん)だけでなく原則としてほかの歯にもみられます(歯根徴)(しこんちょう)。
  ただし、下顎中切歯(かがくちゅうせっし)のように水平(すいへい)な切縁(せつえん)をもつ歯では、こちらの特徴(とくちょう)はほとんど認められません。

 

 

 


  4.歯髄腔(しずいくう)
   歯髄腔(しずいくう)の形は外形(がいけい)の縮図(しゅくず)で、圧平(あっぺい)された
ノミ状(じょう)の髄室(ずいしつ)と円錐形(えんすいけい)の根管(こんかん)に分かれます。
   髄室(ずいしつ)には切縁結節(せつえんけっせつ)に相当して3つの髄室角(ずいしつかく)がみられる。

   髄室(ずいしつ)と根管間(こんかんかん)には明瞭(めいりょう)な境界(きょうかい)はなく互いに移行(いこう)します。


  根管(こんかん)はほとんどが単純根管(たんじゅんこんかん)であるが、歯根(しこん)が
近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)された下顎切歯(かがくせっし)では分岐根管(ぶんきこんかん)のこともあります。

 

 

 

上顎切歯(じょうがくせっし)
  上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)


  切歯(せっし)の基本的(きほんてき)な形態(けいたい)を備えて(そなえて)います。歯冠(しかん)の大きさ(おおきさ)は切歯中最大(せっしちゅうさいだい)で、特に近遠心径(きんしんけい)が大きいです。
   一般(いっぱん)に隆線(りゅうせん)や溝(こう)の発達がよく、浮彫像(うきぼりぞう)は鮮明(せんめい)です。


  歯頸線(しけいせん)は強く(つよく)彎曲(わんきょく)し、そちらの程度(ていど)は歯群中最も(しぐんちゅうもっとも)も強いです。


  歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面(すいへいだんめん)はほぼ三角形(さんかっけい)で、唇側辺(しんそくへん)と遠心舌側辺(えんしんぜっそくへん)は軽く(かるく)凸彎(とつわん)しますが、近心舌側辺(きんしんぜっそくへん)はほぼ直線(ちょくせん)に近いです。各辺の長さは近心舌側辺(きんしんぜっそくへん)が最も長いです。


  歯根(しこん)は単根(たんこん)で、唇側面(しんそくめん)、近心舌側面(きんしんぜっそくめん)、遠心舌側面(えんしんぜっそくめん)の3面をもちます。

   こちらはそれぞれ、歯冠(しかん)の唇側面(しんそくめん)、近心面(きんしんめん)、遠心面(えんしんめん)の続きです。


  切縁(せつえん)からみた唇側面(しんそくめん)の形態(けいたい)は、豊隆型(ほうりゅうがた)が一般的(いっぱんてき)です。

 

 

 

 

 上顎側切歯(じょうがくそくせっし)


  上顎側切歯(じょうがくそくせっし)は上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)に似て(にて)いるが、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)の次に退化傾向(たいかけいこう)がつよいです。
   上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)に比べてやや小さく、歯冠(しかん)は単純化(たんじゅんか)して全般的(ぜんぱんてき)に丸み(まるみ)を帯びて(おびて)います。
歯冠(しかん)の退化傾向(たいかけいこう)は、近心半(きんしんはん)よりも遠心半(えんしんはん)が著しい(いちじるしい)ために、長軸(ちょうじく)に対して(たいして)切歯中(せっしちゅう)最も(もっとも)非対称的(ひたいしょうてき)です。
   そちらの退化度(たいかど)は歯によって異なり(ことなり)、犬歯化(けんしか)、ヘラ形(がた)、矮小歯(わいしょうし)、樽状歯(たるじょうし)、円錐歯(えんすいし)など形態(けいたい)に多様性(たようせい)が出てきます(でてきます)。


  唇側面(しんそくめん)は切縁(せつえん)を含む(ふくむ)4つの辺縁(へんえん)の彎曲(わんきょく)が上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)に比べて(くらべて)著明(ちょめい)で、そちらの輪郭(りんかく)は丸みを帯びます。

 

  切縁(せつえん)は遠心側(えんしんそく)に向かって(むかって)歯頸側(しけいそく)に強く(つよく)傾斜(けいしゃ)し、遠心切縁隅角(えんしんぐうかくちょう)は著しく(いちじるしく)鈍円化(どんえんか)しています。

   したがって、隅角徴(ぐうかくちょう)および歯根徴(しこんちょう)が著明(ちょめい)に表れます。

 


  舌側面(ぜっそくめん)は辺縁隆線(へんえんりゅうせん)が発達(はったつ)し、舌側面窩(ぜっそくめんか)が深く(ふかく)なります。

   辺縁隆線(へんえんりゅうせん)と基底結節(きていけっせつ)の移行部(いこうぶ)には斜切痕(しゃせっこん)が、基底結節(きていけっせつ)と舌側面窩(ぜっそくめんか)の移行部(いこうぶ)には盲孔(もうこう)がしばしば認め(みとめ)られます。


  隣接面(りんせつめん)は、近心面(きんしんめん)の接触点(せっしょくてん)の高さ(たかさ)が遠心面(えんしんめん)より高く(たかく)、したがって近心面(きんしんめん)の面積(めんせき)は遠心面(えんしんめん)より大きく(おおきく)、歯面徴(しめんしょう)が顕著(けんちょ)です。


⑤  歯根(しこん)は上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)と同様(どうよう)に円錐形(えんすいけい)であるが、やや細く(ほそく)て長い(ながい)です。

   近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)されているので、歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面(すいへいだんめん)は卵円形(らんえんけい)に近く(ちかく)なります。

 

 

 

 


   下顎切歯(かがくせっし)


   下顎切歯(かがくせっし)は上顎切歯(じょうがくせっし)に比べて(くらべて)、以下(いか)の特徴(とくちょう)があります。
①  歯冠(しかん)の大きさ(おおきさ)、特(とく)に近遠心径(きんえんしんけい)が小さいです。

   歯の長径(ちょうけい)は上顎(じょうがく)と下顎(かがく)との間(あいだ)にそれほどの差(さ)がないので、唇側面(しんそうめん)からみると上顎(じょうがく)に比べて(くらべて)細長く(ほそながく)みえます。 


  唇側面(しんそくめん)からみると、そちらの近心縁(きんしんえん)ならびに遠心縁(えんしんえん)は根尖(こんせん)まではほぼ直線的(ちょくせんてき)で、上顎切歯(じょうがくせっし)のように歯頸部付近(しけいぶふきん)で屈曲(くっきょく)することはないです。


  各歯面(かくしめん)の隆線(りゅうせん)や結節(けっせつ)の発達が悪く、歯冠表面(しかんひょうめん)は凹凸(とうとつ)が少なく(すくなく)、平面的(へいめんてき)です。


  歯根(しこん)は近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)が強く(つよく)、歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面(すいへいだんめん)は長楕円形(ちょうだえんけい)です。
根管(こんかん)は単一(たんいつ)ですが、まれに分岐根管(ぶんきこんかん)となります。

 

 

 

 

 

   下顎中切歯(かがくちゅうせっし)


  歯冠(しかん)の大きさ(おおきさ)は切歯中最小(せっしちゅうさいしょう)で、特に近遠心径(きんえんしんけい)が小さいです。


  下顎切歯(かがくせっし)の特徴(とくちょう)を顕著(けんちょ)に表して(あらわして)おり、細長く(ほそながく)、すらっとしていて輪郭(りんかく)が鋭く、長軸(ちょうじく)に対して近心半(きんしんはん)、遠心半(えんしんはん)がほとんど同形(どうけい)・同大(どうだい)で左右対称的(さゆうたいしょうてき)です。
   したがって、隅角徴(ぐうかくちょう)および歯根徴(しこんちょう)はほとんど認められません。

  切歯(せっし)からみると、切縁(せつえん)は唇舌軸(しんぜつじく)(歯冠(しかん)を近遠心半(きんえんしんはん)に2分する仮想線(かそうせん))と直角(ちょっかく)に交わり(まじわり)、近遠心軸(きんえんしんじく)(歯冠(しかん)を頬舌側半(きょうぜつそくはん)に2分する仮想線(かそうせん))の方向(ほうこう)と一致(いっち)します。


④  歯根近心面(しこんきんしんめん)には縦(たて)に走る(はしる)根面隆線(こんめんりゅうせん)があり、遠心面(えんしんめん)には浅い(あさい)根面溝(こんめんこう)がみられます。こちらの根面(こんめん)の形態(けいたい)は、下顎中切歯(かがくちゅうせっし)の近心側(きんしんそく)と遠心側(えんしんそく)を区別(くべつ)するうえで重要(じゅうよう)な特徴(とくちょう)となります。
   研究者(けんきゅうしゃ)によれば、近心面(きんしんめん)に明瞭(めいりょう)な隆線(りゅうせん)のあるものは約40%、隆線(りゅうせん)はないが近心面(きんしんめん)と遠心面(えんしんめん)の豊隆度(ほうりゅうど)の差が明らかなものは約35%、両面(りょうめん)に差がないものは約25%です。

 

 

 

 


  下顎側切歯(かがくそくせっし)


  下顎中切歯(かがくちゅうせっし)よりやや大きく(おおきく)、歯冠近遠心径(しかんきんえんしんけい)の違い(ちがい)が明らかです。


  遠心半(えんしんはん)は近心半(きんしんはん)より発達(はったつ)が劣り(おとり)、非対称的(ひたいしょうてき)で、隅角徴(ぐうかくちょう)および歯根徴(しこんちょう)が顕著(けんちょ)に表れます。


  切縁(せつえん)は遠心側(えんしんそく)に向かって斜走(しゃそう)し、唇舌的(しんぜつてき)に対して(たいして)斜交(しゃこう)しています。

   下顎中切歯(かがくちゅうせっし)では歯冠(しかん)が歯根(しこん)の上(うえ)にまっすぐに載って(のって)いるが、下顎側切歯(かがくそくせっし)では歯根(しこん)と角度(かくど)をもち、歯冠(しかん)が遠心側(えんしんそく)にねじれているようにみえます。


④  歯根近心面(しこんきんしんめん)の根面隆線(こんめんりゅうせん)や遠心面(えんしんめん)の根面溝(こんめんこう)の出現頻度(しゅつげんひんど)が高く、そちらの程度も強いです。

 

   切歯にみられる諸形態


  シャベル型切歯:舌側面(ぜっそくめん)の辺縁隆線(へんえんりゅうせん)の発達(はったつ)が良好(りょうこう)で、舌側面窩(ぜっそくめんか)が特に深くシャベル状になったものをいいます。


  シャベル型切歯の出現頻度(しゅつげんひんど)はアメリカ・インディアンやエスキモーなどのモンゴロイド(黄色人種)(おうしょくじんしゅ)に高く、コーカソイド(白色人種)(はくしょくじんしゅ)やネグロイド(黒色人種)(こくしょくじんしゅ)では低いです。日本人(にほんじん)を含むシノドント(東北・東アジアモンゴロイド)における出現頻度(しゅつげんひんど)はモンゴロイドよりやや劣りますが、コーカソイドやネグロイドに比べればはるかに高率(こうりつ)です。

 


   ダブルシャベル型切歯:唇側面(しんそくめん)の近遠心辺縁部(きんえんしんへんえんぶ)(ちょうど舌側両辺縁隆線(ぜっそくりょうへんえんりゅうせん)の裏面(うらめん)にあたる部分(ぶぶん))が隆起(りゅうき)し、そちらのため隆起(りゅうき)に囲まれた(かこまれた)中央部(ちゅうおうぶ)がわずかに凹んだ(へこんだ)ものであります。日本人(にほんじん)を含む(ふくむ)シノドントに多いです。


  棘突起(ちょくとっき):基底結節(きていけっせつ)から舌側面窩(ぜっそくめんか)に向かって(むかって)突出(とっしゅつ)した1~3本の棘状(とげじょう)の突起(とっき)のことをいいます。


  斜切痕(しゃせっこん)(舌側面歯頸裂溝)(ぜっそくめんしけいれっこう):基底結節(きていけっせつ)のほぼ中央(ちゅうおう)、または辺縁隆線(へんえんりゅうせん)との境界部付近(きょうかいぶふきん)で舌側面窩(ぜっそくめんか)から歯頸線(しけいせん)に向かって斜め(ななめ)に経過(けいか)する深い溝(こう)のことで、上顎切歯(じょうがくせっし)、特(とく)に側切歯(そくせっし)の遠心側(えんしんそく)に多く見られます。

 

   こちらの溝(こう)は歯頸線(しけいせん)を超えて(こえて)歯根(しこん)に延長(えんちょう)することもあります。研究者(けんきゅうしゃ)によれば、出現頻度(しゅつげんひんど)は中切歯(ちゅうせっし)10%、側切歯(そくせっし)50%であり、盲孔(もうこう)(下記)(かき)と同じく(おなじく)側切歯(そくせっし)においてはるかに高率(こうりつ)です。

 

 

 


  盲孔(もうこう):上顎側切歯(じょうがくそくせっし)の舌側面窩(ぜっそくめんか)と基底結節(きていけっせつ)の移行部(いこうぶ)にみられる陥凹(かんおう)で、エナメル質(しつ)が洞穴状(どうけつじょう)に陥凹(かんおう)したものです。研究者によれば、出現頻度(しゅつげんひんど)は上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)が10%、側切歯(そくせっし)60%で側切歯(そくせっし)においてはるかに高率(こうりつ)です。

 

 


  側切歯(そくせっし)の犬歯化(けんしか):下顎側切歯(かがくそくせっし)の切縁中央部(せつえんちゅうおうぶ)が尖頭状(せんとうじょう)に突出(とっしゅつ)することがあります。

 


  切歯(せっし)の退化傾向(たいかけいこう):上顎側切歯(じょうがくそくせっし)は、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)に次いで、矮小歯(きょうせいし)、円筒歯(えんとうし)、樽状歯(たるじょうし)、円錐歯(えんすいし)(歯頸部に底をおく円錐状の歯)などの異常形態(いじょうけいたい)を示す(しめす)ことが多く(おおく)、時(とき)には先天的(せんてんてき)に欠如(けつじょ)する(約1.4%)こともあります。

 


  下顎中切歯(かがくちゅうせっし)(1.2%)や下顎側切歯(かがくそくせっし)(0.7%)にも欠如(けつじょ)がみられます。

  上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)と側切歯(そくせっし)、下顎中切歯(かがくちゅうせっし)と側切歯(そくせっし)、下顎側切歯(かがくそくせっし)と犬歯(けんし)の癒合(ゆごう)もみられます。

 

 


  犬歯(けんし)

   犬歯(けんし)(canine,cuspid)は切歯(せっし)と小臼歯(しょうきゅうし)との間(あいだ)に位置(いち)し、下顎安静位(かがくあんせいい)においては口角部付近(こうかくぶふきん)にあります。
  そちらのため、犬歯(けんし)のことを隅角歯(ぐうかくし)とよぶことがあります。

 


   上下顎(じょうげがく)に1対、合計4本あり、9~12歳頃に乳犬歯(にゅうけんし)と交換(こうかん)する代生歯(だいせいし)です。

 

 

 


   犬歯(けんし)はイヌ、ネコなどの肉食動物(にくしょくどうぶつ)でよく発達(はったつ)し、多く(おおく)の草食動物(そうしょくどうぶつ)では強く(つよく)退化(たいか)しているが、欠如(けつじょ)していることが多いです。


   犬歯(けんし)は歯冠切縁(しかんせつえん)の中央部(ちゅうおうぶ)が三角錐状(さんかくすいじょう)に突出(とっしゅつ)して尖頭(せんとう)(cusp tip)を形成(けいせい)しており、

 

 

 

   唇側(しんそく)からみると槍(やり)の穂状(ほじょう)をしています。こちらは歯冠中央部(しかんちゅうおうぶ)の唇側面隆線(しんそくめんりゅうせん)の発達(はったつ)が辺縁部(へんえんぶ)の隆線(りゅうせん)と比較(ひかく)して相対的(そうたいてき)に良好(りょうこう)なために生じた(しょうじた)形態(けいたい)で、

 

 

  近心唇側面(きんしんしんそくめん)と遠心唇側面(えんしんしんそくめん)ができます。


  歯根(しこん)は切歯(せっし)と同様(どうよう)、円錐形(えんすいけい)、単根(たんこん)です。


  隣接面(りんせつめん)からみると犬歯(けんし)の全形(ぜんけい)は紡錘形(ぼうすいけい)となります。

 

 


  1.歯冠(しかん)
  歯冠(しかん)は、唇側面(しんそくめん)、舌側面(ぜっそくめん)、近心面(きんしんめん)および遠心面(えんしんめん)の4面(4めん)に区別(くべつ)されます。


  1)唇側面(しんそくめん)
   唇側面(しんそくめん)の外形(がいけい)は上下(じょうげ)に長い(ながい)不正五角形(ふせいごかっけい)で、切縁(せつえん)、近心縁(きんしんえん)、遠心縁(えんしんえん)、歯頸縁(しけいそく)に区別(くべつ)されます。

   尖頭(せんとう)は中央(ちゅうおう)よりやや近心側(きんしんそく)に片寄り(かたより)、切縁(せつえん)を近心切縁(きんしんせつえん)と遠心切縁(えんしんせつえん)に2分します。


   近心切縁(きんしんせつえん)は遠心切縁(えんしんせつえん)に比べて(くらべて)傾斜(けいしゃ)が緩やか(ゆるやか)で短いです。


   近心縁(きんしんえん)と遠心縁(えんしんえん)は歯頸側(しけいそく)に向かって集合(しゅうごう)しているため、唇側面(しんそくめん)の近遠心径(きんえんしんけい)は切縁側(せつえんそく)から歯頸側(しけいそく)に向かうにしたがって小さくなっています。

 

   また、近心隅角(きんしんぐうかく)は遠心隅角(えんしんぐうかく)より尖って(とがって)隅角徴(ぐうかくちょう)を示し(しめし)、近心側(きんしんそく)の突出部(とっしゅつぶ)は遠心側(えんしんそく)より切縁側寄り(せつえんそくより)に位置します。
  

   唇側面中央部(しんそくめんちゅうおうぶ)は切縁部(せつえんぶ)に比べて(くらべて)唇側(しんそく)への発達度(はったつど)が良好なため、唇側面(しんそくめん)は切縁歯頸側方向(せつえんしけいそくほうこう)(垂直)と近遠心方向(きんえんしんほうこう)(水平方向)(すいへいほうこう)に強く豊隆(ほうりゅう)します。

 

 

   特に近遠心方向(きんえんしんほうこう)の豊隆(ほうりゅう)が顕著(けんちょ)で、膨らみ(ふくらみ)の程度(ていど)は遠心半(えんしんはん)よりも近心半(きんしんはん)のほうが強いです。

 

 

 

   したがって、唇側面(しんそくめん)の最突出部(さいとっしゅつぶ)は歯冠(しかん)の正中線(せいちゅうせん)より近心側(きんしんそく)に片寄ります。

 

 

   切縁(せつえん)からみると、唇側面(しんそくめん)から隣接面(りんせつぶ)の移行部(いこうぶ)の彎曲度(わんきょくど)は遠心(えんしん)に比べて(くらべて)近心(きんしん)のほうが強く、彎曲徴(わんきょくちょう)を示します。 

 

 


   唇側(しんそく)には、切歯(せっし)と同様(どうよう)に、縦に走る3本の唇側面隆線(しんそくめんりゅうせん)と2本の浅い唇側面溝(しんそくめんこう)があります。

 

 

 

 


   特に、中心唇側面隆線(ちゅうしんしんそくめんりゅうせん)の発達(はったつ)が両側(りょうそく)のものに比べて(くらべて)著しく(いちじるしく)良好(りょうこう)で歯冠全長(しかんぜんちょう)にわたって縦走(じゅうそう)しており、そちらの幅(はば)は歯冠近遠心径(しかんきんえんしんけい)のほぼ1/2に達します。

 

 

   そちらの結果(けっか)、近心(きんしん)および遠心唇側面隆線(えんしんしんそくめんりゅうせん)の発達(はったつ)は悪く(わるく)、近心(きんしん)および遠心唇側面溝(えんしんしんそくめんこう)は浅いです。

 

 


  歯根軸(しこんじく)の延長線(えんちょうせん)と近心隅角(きんしんぐうかく)・遠心隅角(えんしんぐうかく)を結ぶ(むすぶ)線(せん)とのなす角(かく)は、近心側(きんしんそく)では鈍角(どんかく)、遠心側(えんしんそく)では鋭角(えいかく)となり、歯根徴(しこんちょう)を示します。

 

 

 


  2)舌側面(ぜっそくめん)
    舌側面(ぜっそくめん)の外形(がいけい)は菱形(ひしがた)で、近心縁(きんしんえん)、遠心縁(えんしんえん)、歯頸縁(しけいえん)は強く(つよう)線状(せんじょう)に隆起(りゅうき)し、近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)、遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)、基底結節(きていけっせつ)(舌側面歯頸隆線)(ぜっそくめんしけいりゅせん)がみられます。


    基底結節(きていけっせつ)から切縁(せつえん)に向かって、1~3個の棘突起(ちょくとっき)がみられます。


    舌側面(ぜっそくめん)には縦(たて)に走る(はしる)3本の舌側面隆線(ぜっそくめんりゅうせん)と2本の舌側面溝(ぜっそくめんこう)があります。

 

 

 

    ただし、中心側面隆線(ちゅうしんそくめんりゅうせん)の発達(はったつ)が良好であるため、そちらの両側(りょうそく)にある隆線(りゅうせん)の発達(はったつ)は悪く(わるく)、副隆線(ふくりゅうせん)とよばれます。

 

   特に、近心舌側面副隆線(きんしnぜっそくめんふくりゅうせん)は発達(はったつ)が悪く(わるく)欠如(けつじょ)することが多いです。

 

 

 

   良好な中心舌側面隆線(ちゅうしんぜっそくめんりゅうせん)の発達(はったつ)により、中央部(ちゅうおうぶ)の舌側面窩(ぜっそくめんか)はほとんどみられません。

 

 

 


    3)隣接面(りんせつめん)
    隣接面(りんせつめん)の外形(がいけい)は、ほぼ二等辺三角形(にとうへんさっかけい)であり切歯(せっし)に類似(るいじ)するが、切歯(せっし)に比べて(くらべて)唇舌径(しんぜつけい)が大きい(おおきい)ため、底辺(ていへん)、すなわち歯頸縁(しけいえん)が長いです。

 

 

    唇側縁(しんそくえん)は、切歯(せっし)ではほぼ直線(ちょくせん)であるのに対し(たいし)、犬歯(けんし)は中心唇側面隆線(ちゅうしんしんそくめんりゅうせん)の発達(はったつ)が良好(りょうこう)なため唇側(しんそく)に凸彎(とつわん)しています。

 

    一方、舌側縁(ぜっそくえん)は、辺縁隆線(へんえんりゅうせん)が発達(はったつ)しているため中央部(ちゅうおうぶ)が凹彎(おうわん)せず、基底結節部(きていけっせつ)が突隆(とつりゅう)します。

 

 

 


   犬歯(けんし)では唇側面(しんそくめん)、舌側面(ぜっそくめん)ともに近遠心的(きんえんしんてき)に強く凸彎(とつわん)し、隣接面(りんせつめん)からみた輪郭(りんかく)には唇側面(しんそくめん)、舌側面(ぜっそくめん)および切縁(せつえん)の一部(いちぶ)を含んでいるため、固有(こゆう)の隣接面(りんせつめん)はこれより狭く(せまく)なります。

 

   本来(ほんらい)の隣接面(りんせつめん)の頂点(ちょうてん)、すなわち接触点(せっしょくてん)の位置(いち)は、近遠心隅角部(きんしんぐうかくぶ)に一致(いっち)しており、近心(きんしん)の接触点(せっしょくてん)は遠心(えんしん)の接触点(せっしょくてん)より切縁側寄り(せつえんそくより)に位置(いち)するため、固有隣接面(こゆうりんせつめん)の面積(めんせき)は遠心面(えんしんめん)よりも近心面(きんしんめん)のほうが大きく(おおきく)、歯面徴(しめんちょう)を示します。

 

 

 

 


   2.歯頸部(しけいぶ)
   歯頸線(しけいそく)は、唇側(しんそく)と舌側(ぜっそく)では歯根側(しこんそく)に向かって強く弓状(ゆみじょう)に凸彎(とつわん)し、唇側(しんそく)のほうが舌側(ぜっそく)より根尖側(こんせんそく)に位置します。

 

 

 

   隣接面(りんせつめん)では歯冠側(しかんそく)に凸彎(とつわん)し、凸彎(とつわん)の程度(ていど)は遠心面(えんしんめん)より近心面(きんしんめん)のほうが強いです。
   歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面(すいへいだんめん)は、ほぼ卵円形(らんえんけい)です。

 

 


  3.歯根(しこん)
  歯根(しこん)は円錐形(えんすいけい)、単根(たんこん)で近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)されています。

 

 

 


  4.歯髄腔(しずいくう)
  歯の外形(がいけい)の縮図(しゅくず)で、尖頭(せんとう)に相当(そうとう)して先鋭(せんえい)な髄室角(ずいしつかく)があります。

  根管(こんかん)は通常(つうじょう)、単純根管(たんじゅんこんかん)であるが、下顎犬歯(かがくけんし)では歯根(しこん)の近遠心的圧平(きんえんしんてきあっぺいど)が強い(つよい)ため分岐根管(ぶんきこんかん)のこともあります。

 

 

 

    上顎犬歯(じょうがくけんし)


①  上顎犬歯(じょうがくけんし)は、前述(ぜんじゅつ)したような犬歯(けんし)の基本的(きほんてき)な形態(けいたい)を備えて(そなえて)います。


  唇側面(しんそくめん)からみると、歯冠(しかん)の近心縁(きんしんえん)は遠心縁(えんしんえん)より長く(ながく)、ほぼ直線的(ちょくせんてき)であるのに対し(たいし)、遠心縁(えんしんえん)は歯の長軸(ちょうじく)に対して著しく(いちじるしく)傾き(かたむき)、遠心側(えんしんそく)に向かってやや凸彎(とつわん)しています。

 


  歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面(すいへいだんめん)は上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)より近遠心的圧平(きんえんしんてきあっぺい)が強く、そちらのため三角形(さんかっけい)と卵円形(らんえんけい)の中間(ちゅうかん)の形態(けいたい)を示します。

   なお、水平断面(すいへいだんめん)において近心辺(きんしんへん)には突隆(とつりゅう)がみられ、遠心辺(えんしんへん)は軽度(けいど)に凹彎(おうわん)します。

 


④  歯根(しこん)の長さ(ながさ)は全歯群中(ぜんしぐんちゅう)で最も(もっとも)長いです。

   そちらのため、顎骨(がっこつ)のなかに深く植立(しょくりつ)して緊密(きんみつ)に固定(こてい)されており、歯周疾患(ししゅうしっかん)のような場合(ばあい)でも動揺(どうよう)したり脱落(だつらく)したりすることが少ないです。

 

 

 

  下顎犬歯(かがくけんし)


  上顎犬歯(じょうがくけんし)に比べて(くらべて)歯冠近遠心径(しかんきんえんしんけい)が特(とく)に小さく(ちいさく)、長径(ちょうけい)にはほとんど差がないため、

  下顎犬歯(かがくけんし)の歯冠(しかん)は上顎(じょうがく)より細長く(ほそながく)みえます。

 

 


  唇側面(しんそくめん)からみると、歯冠(しかん)の近心縁(きんしんえん)と歯根(しこん)の近心縁(きんしんえん)は一直線(いっちょくせん)で(上顎では屈曲しています)、全体的(ぜんたいてき)にすらっとしてみえます。

 

 

③  隣接面(りんせつめん)からみると、長軸(ちょうじく)はほぼ尖頭(せんとう)の位置を通ります。
  (上顎犬歯では、長軸は尖頭よりも舌側を通過します)

 

 


  つまり、下顎犬歯(かがくけんし)の唇側面(しんそくめん)は上顎犬歯(じょうがくけんし)の唇側面(しんそくめん)に比べ(くらべ)舌側傾斜(ぜっそくけいしゃ)の程度(ていど)が強く(つよく)、尖頭(せんとう)は上顎(じょうがく)より舌側(ぜっそく)に位置(いち)します。

 

 

 


④  舌側面(ぜっそくめん)の辺縁隆線(へんえんりゅうせん)や基底結節(きていけっせつ)の発達(はったつ)は上顎犬歯(じょうがくけんし)より劣って(おとって)います。舌側面窩(ぜっそくめんか)は凹凸(おうとつ)が少なく(すくなく)、浅く(あさく)なめらかです。

 

 

⑤  歯根(しこん)の近遠心的圧平(きんえんしんてきあっぺい)の程度(ていど)は上顎犬歯(じょうがくけんし)よりも強く(つよく)、そちらのため根管(こんかん)が分岐(ぶんき)することがあります。まれに、唇側根(しんそくこん)、舌側根(ぜっそくこん)の2根(2こん)となることもあります。

 

 

   犬歯(けんし)の諸形態(しょけいたい)


 犬歯結節(けんしけっせつ):犬歯(けんし)の舌側(ぜっそく)にみられるもので、基底結節(きていけっせつ)が以上(いじょう)に発達(はったつ)したものです。


 犬歯(けんし)の退化形(たいかけい):過剰犬歯(かじょうけんし)、犬歯(けんし)の欠如(けつじょ)(1%)がみられます。上顎犬歯(じょうがくけんし)では円錐歯(えんすいし)がみられることがあります。


③ 犬歯(けんし)に現れる(あらわれる)性差(せいさ):犬歯(けんし)では、多く(おおく)の哺乳動物(ほにゅうどうぶつ)で顕著(けんちょ)に性差(せいさ)がみられます。ヒトでも、明瞭(めいりょう)ではないが性差(せいさ)が認められる(みとめられる)という報告(ほうこく)があります。

 

 

 

 

    小臼歯(しょうきゅうし)


    小臼歯(しょうきゅうし)は犬歯(けんし)と大臼歯(だいきゅうし)の間(あいだ)にある歯で、頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の2咬頭(2こうとう)をもち咬合面(こうごうめん)をつくります。
    双頭歯(そうとうし)ともいいます。頬(きょう)に面して(めんして)おり、上下顎(じょうげがく)にそれぞれ2対、合計8本ある。10~12歳頃に乳臼歯(にゅきゅうし)と交換(こうかん)する代生歯(だいせいし)です。


  1.歯冠(しかん)
    歯冠(しかん)の外形(がいけい)は六面体(ろくめんたい)で、頬側面(きょうそくめん)、舌側面(ぜっそくめん)、近心面(きんしんめん)、遠心面(えんしんめん)ならびに咬合面(こうごうめん)が区別(くべつ)されます。

 


    1)頬側面(きょうそくめん)


    頬側面(きょうそくめん)の外形(がいけい)は不正五角形(ふせいごかっけい)で、咬合縁(こうごうえん)、近心縁(きんしんえん)、遠心縁(えんしんえん)および歯頸縁(しけいえん)に区別(くべつ)されます。


    咬頭(こうとう)はほぼ中央(ちゅうおう)にあり、咬合縁(こうごうえん)を近心咬合縁(きんしんこうごうえん)と遠心咬合縁(えんしんこうごうえん)に2分(にぶん)します。

 

   犬歯(けんし)に似ていますが、全体の大きさが小さく、頬側咬頭(きょうそくこうとう)が犬歯(けんし)の尖頭(せんとう)に比べて低いため、2つの咬合縁(こうごうえん)のつくる角(かく)は大きいです。

 

 


   頬側面(きょうそくめん)の中央(ちゅうおう)には頬側咬頭頂(きょうそくこうとうちょう)から縦(たて)に走る(はしる)1本の頬側面隆線(きょうそくめんりゅうせん)があり、そちらの両側(りょうそく)には浅い(あさい)近心頬側面溝(きんしんきょうそくめんこう)と遠心頬側面溝(えんしんきょうそくめんこう)があります。

 

 

 


  2)舌側面(ぜっそくめん)
    舌側面(ぜっそくめん)の外形(がいけい)は頬側面(きょうそくめん)とほぼ同様(どうよう)ですが、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)は頬側咬頭(きょうそくこうとう)に比べて(くらべて)発達(はったつ)が悪く(わるく)、低く(ひくく)狭く(せまく)なって全体(ぜんたい)に丸み(まるみ)を帯びて(おびて)います。

    そちらのため、舌側面(ぜっそくめん)の近心縁(きんしんえん)と遠心縁(えんしんえん)は隣接面(りんせつめん)に自然(しぜん)に移行(いこう)し、両者(りょうしゃ)の境界(きょうかい)は明瞭(めいりょう)ではないです。

 

 


    舌側面(ぜっそくめん)からは、固有(こゆう)の舌側面(ぜっそくめん)のほかに近心面(きんしんめん)、遠心面(えんしんめん)、咬合面(こうごうめん)の一部(いちぶ)がみえます。こちらの傾向(けいこう)は下顎第一小臼歯)(かがくだいいちしょうきゅうし)において特に著しい(いちじるしい)です。

 

 

 


  3)隣接面 (りんせつめん)
    隣接面(りんせつめん)の外形(がいけい)は、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の形成(けいせい)に伴って(ともなって)台形(だいけい)となり、頬側縁(きょうそくえん)、咬合縁(こうごうえん)、舌側縁(ぜそくえん)および歯頸縁(しけいえん)をもちます。咬合縁(こうごうえん)の輪郭(りんかく)は一様(いちよう)ではないです。

 

 

 

     こちらは舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の発達(はったつ)が頬側咬頭(きょうそくこうとう)より劣り(おとり)、そちらの程度(ていど)が歯によってかなりの差異(さい)があるためで、上顎(じょうがく)はW字形、下顎(かがく)はM字形です。

 

      なお、頬側面(きょうそくめん)と舌側面(ぜっそくめん)がともに近遠心方向(きんえんしんほうこう)に膨らんで(ふくらんで)いるため、隣接面(りんせつめん)からみると頬側面(きょうそくめん)や舌側面(ぜっそくめん)の一部(いちぶ)がみえ、さらに咬合面(こうごうめん)の一部(いちぶ)がみえます。


      接触点(せっしょくてん)が高位(こうい)にある近心面(きんしんめん)のほうが遠心面(えんしんめん)より面積(めんせき)が大きく、歯面徴(しめんちょう)を示します。

 

 

 


  4)咬合面(こうごうめん)
   咬合面(こうごうめん)の外形(がいけい)は、頬舌的(きょうぜつてき)に長い不正五角形(ふせいごかっけい)(上顎)(じょうがく)もしくは扇型(おおぎがた)・四角形(しかっけい)(下顎)(かがく)で、頬側咬頭(きょうそくこうとう)、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の2咬頭(2こうとう)をもちます。

 

       頬側咬頭(きょうそくこうとう)の舌側斜面(ぜっそくしゃめん)にある中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)の両側(りょうそく)には、発達不良な近心咬合面副隆線(きんしんこうごうめんふくりゅうせん)、遠心咬合面副隆線(えんしんこうごうめんふくりゅうせん)があり、さらにそちらの外側(がいそく)には咬合面辺縁部(こうごうめんへんえんぶ)をふちどる近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)、遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)があって、舌側(ぜっそく)につながります。

 

 

 

      中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)は全体の形が三角形に似ているので三角隆線(さんかくりゅうせん)ともいいます。

 

       なお、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)は全体的に隆起(りゅうき)しているので、頬側斜面(きょうそくしゃめん)にある中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)と近遠心咬合面副隆線(きんえんしんこうごうめんふくりゅうせん)の区別ができません。


    小臼歯(しょうきゅうし)の頬側咬頭(きょうそくこうとう)は犬歯(けんし)の尖頭(せんとう)に、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)は犬歯(けんし)の基底結節(きていけっせつ)に相当し、頬側咬頭頂(きょうそくこうとうちょう)から舌側(ぜっそく)に向かって咬合面(こうごうめん)の中央付近まで延びる中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)は犬歯(けんし)の中心舌側面隆線(ちゅうしんぜっそくめんりゅうせん)に相当します。

       咬合面(こうごうめん)は舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の形成により生まれた面です。

 

 

 


   咬合面(こうごうめん)の大部分は頬側咬頭(きょうそくこうとう)の舌側斜面(ぜっそくしゃめん)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の頬側斜面(きょうそくしゃめん)からつくられており、両斜面(りょうしゃめん)の合するところには近遠心方向(きんえんしんほうこう)に走る中心溝(ちゅうしんこう)がはっきりと認められます。

 

 


      中心溝(ちゅうしんこう)の両端は近心(きんしん)および遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)と接しており、近心小窩(きんしんしょうか)、遠心小窩(えんしんしょうか)から頬側(きょうそく)および舌側(ぜっそく)に向かって頬側副溝(きょうそくふくこう)、舌側副溝(ぜっそくふくこう)という浅い副溝(ふくこう)が走ります。
    

 

 

       固有咬合面(こゆうこうごうめん)の境界は、頬側(きょうそく)は頬側咬頭頂(きょうそくこうとうちょう)から近心(きんしん)にのびる近心咬合縁(きんしんこうごうえん)と遠心(えんしん)にのびる遠心咬合縁(えんしんこうごうえん)、舌側(ぜっそく)は舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の近心咬合縁(きんしんこうごうえん)と遠心咬合縁(えんしんこうごうえん)、近心側(きんしんそく)は近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)、遠心側(えんしんそく)は遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)のそれぞれ尾根(おね)を結んだ線です。

 

 

したがって、咬合面(こうごうめん)からみると、頬側面(きょうそくめん)および舌側面(ぜっそくめん)の一部、さらに隣接面(りんせつめん)の一部もわずかながらみえ、咬合面(こうごうめん)の輪郭(りんかく)と固有咬合面(こゆうこうごうめん)の範囲は一致しないです。

 

 

 


  2.歯頸部(しけいぶ)
   歯頸線(しけいせん)の彎曲(わんきょく)の程度は、切歯(せっし)あるいは犬歯(けんし)に比べて著しくゆるやかです。隣接面(りんせつめん)では咬頭側(こうとうそく)に向かって弱く弓状(きゅうじょう)に凸彎(とつわん)し、凸彎(とつわん)の程度は遠心面(えんしんめん)より近心面(きんしんめん)のほうがやや強いです。
    歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面(すいへいだんめん)は、上顎(じょうがく)ではまゆ形、下顎(かがく)では長楕円形(ちょうだえんけい)ないし卵円形(らんえんけい)です。

 

 


  3.歯根(しこん)
   小臼歯(しょうきゅうし)の歯根長(しこんちょう)は犬歯(けんし)に比べると著しく短く、原則単根(げんそくたんこん)です。ただし、上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)では約50%が頬側根(きょうそくこん)、舌側根(ぜっそくこん)の2根(2こん)となります。

 


     歯を頬側(きょうそく)からみると、歯根長軸(しこんちょうじく)の延長線と近心隅角(きんしんぐうかく)、遠心隅角(えんしんぐうかく)を結ぶ線とがなす角(かく)は、近心側(きんしんそく)で鈍角(どんかく)、遠心側(えんしんそく)で鋭角(えいかく)となり、歯根徴(しこんちょう)を示します。

 

 

 


  4. 歯髄腔(しずいくう)
     歯の外形(がいけい)の縮図(しゅくず)で、頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)に相当して尖鋭(せんえい)な髄室角(ずいしつかく)があります。また、咬合面(こうごうめん)の形成に伴って髄室天蓋(ずいしつてんがい)が生まれます。

 


    根管(こんかん)は原則、単純根管(たんじゅんこんかん)であるが、上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)では分岐根管(ぶんきこんかん)が多いです。

 

    分岐根管(ぶんきこんかん)の場合には髄室床(ずいしつしょう)ができ、髄室(ずいしつ)ならびに根管口(こんかんこう)が明瞭になります。

 

 


    上顎小臼歯(じょうがくしょうきゅうし)


   歯冠(しかん)は近遠心的(きんえんしんてき)に強く圧平(あっぺい)され、歯根(しこん)も近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)されます。

    歯冠軸(しかんじく)と歯根軸(しこんじく)が一致します。
   舌側咬頭(ぜっそくこうとう)が発達し、咬合面(こうごうめん)の溝(こう)の形態はH字形です。

 

上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)


 歯冠(しかん)は近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)され、頬舌径(きょうぜつけい)が近遠心径(きんえんしんけい)より長い不正六面体(ふせいろくめんたい)です。

 

 


 歯冠頬側面(しかんきょうそくめん)の外形は不正五角形(ふせいごかっけい)で、頬側咬頭頂(きょうそくこうとうちょう)は咬合縁(こうごうえん)のほぼ中央か、わずかに遠心側(えんしんそく)寄りにあります。

    こちらため、近心咬合縁(きんしんこうごうえん)と遠心咬合縁(えんしんこうごうえん)を比べると、同長(どうちょう)か、やや近心咬合縁(きんしんこうごうえん)のほうが長いです。

 

 


 歯冠頬側面(しかんきょうそくめん)は全体として近遠心方向(きんえんしんほうこう)にかなり豊隆(ほうりゅう)しており、遠心頬側隅角(えんしんきょうそくぐうかく)のほうが近心頬側隅角(きんしんきょうそくぐうかく)よりやや突出(とっしゅつ)しています(逆隅角徴)(ぎゃくぐうかくちょう)。

 


 舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の高さは頬側咬頭(きょうそくこうとう)の約85%程度です。

 


 咬合面(こうごうめん)の外形は頬舌径(きょうぜつけい)が近遠心径(きんえんしんけい)より長い丸みを帯びた不正五角形(ふせいごかっけい)で、頬側縁(きょうそくえん)は角度の大きな屋根型(やねがた)、舌側縁(ぜっそくえん)は円形です。

  近心頬側隅角(きんしんきょうそくぐうかく)が鈍円(どんえん)であるのに対し、遠心頬側隅角(えんしんきょうそくぐうかく)は遠心側(えんしんそく)に向かって突出(とっしゅつ)し、逆彎曲徴(ぎゃくわんきょくちょう)を示します。

 

 


 咬合面(こうごうめん)の近心縁(きんしんえん)と遠心縁(えんしんえん)は舌側(ぜっそく)に向かって集合しているため舌側半(ぜっそくはん)は狭められ、舌側縁(ぜっそく)が短いです。

 それぞれ舌側縁(ぜっそくえん)と自然に移行します。

 

 


 中心溝(ちゅうしんこう)は舌側(ぜっそく)寄りを近遠心方向(きんえんしんほうこう)に一直線に走り、頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)がそれぞれ舌側(ぜっそく)および頬側方向(きょうそくほうこう)にほぼ一直線に走って中心溝(ちゅうしんこう)のところで相対しています。

 


 中心溝(ちゅうしんこう)の両端は辺縁隆線(へんえんりゅうせん)を乗り越えて隣接面(りんせつめん)に及ぶことが多いです。

  こちらを横副溝(おうふくこう)または辺縁溝(へんえんこう)といい、近心(きんしん)に多くみられます。

 


 近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)の一部が近心頬側副溝(きんしんきょうそくふくこう)と近心横副溝(きんしんおうふくこう)に分断された介在結節(かいざいけっせつ)がみられることがあります。


 歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面はまゆ形で、ほぼ中央で強くくびれています。そちらの程度は遠心(えんしん)より近心(きんしん)のほうが強いです。

 

 


 歯根(しこん)は小臼歯(しょうきゅうし)で最も短く、近遠心的(きんえんしんてき)にかなり
強く圧平(あっぺい)されています。

   そちらの圧平度(あっぺいど)には差異(さい)がみられ、圧平(あっぺい)の程度が比較的弱い場合には単根(たんこん)、圧平(あっぺい)の程度が強い場合には頬側根(きょうそくこん)と舌側根(ぜっそくこん)の2根(2こん)に分岐します。

 

 

   そちらの出現率は約50%です。
   なお、圧平(あっぺい)が中等度の場合には、歯根遠心面(しこんえんしんめん)に深くて広い根面溝(っこんめんこう)がつくられます。

 

 


 歯髄腔(しずいくう)は髄室天蓋(ずいしつてんがい)および髄室角(ずいしつかく)が発達し、2根管(2こんかん)の場合には髄室床(ずいしつしょう)も明らかとなります。

 

  根管(こんかん)は大部分が2根管(2こんかん)であり、単純根管(たんじゅんこんかん)は20~25%にすぎません。

 

 

 

      上顎第二小臼歯(じょうがくだいにしょうきゅうし)


① 上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)によく似るが、退化傾向(たいかけいこう)が強いです。

  特に頬側半(きょうそくはん)の縮小が著しく、上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)に比べて頬側半(きょうそくはん)と舌側半(ぜっそくはん)との差がかなり小さくなり、全体として丸みを帯びています。

  舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の高さは頬側咬頭(きょうそくこうとう)の高さの約95%弱で、隣接面(りんせつめん)からみると頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)を結ぶ線は水平に近くなります。

 


 咬合面(こうごうめん)からみると、近遠心(きんえんしん)の2つの辺縁(へんえん)がほぼ平行し、隅角部(ぐうかくぶ)が丸みを帯びているため、全体的に長楕円形(だえんけい)で、左右対称となります。


 上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)に比べて、中心溝(しゅうしんこう)は短く、横副溝(おうふくこう)の出現頻度も低いです。


 歯根(しこん)は近遠心的圧平(きんえんしんてきあっぺい)が弱く、単根(たんこん)が多い(約95%)。したがって、根管(こんかん)も単純根管(たんじゅんこんかん)が多く、2根管(2こんかん)のものは上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)よりはるかに少ないです。
     

 

 

  下顎小臼歯(かがくしょうきゅうし)
      下顎第一小臼歯(かがくだいいちしょうきゅうし)


 下顎第一小臼歯(かがくだいいちしょうきゅうし)は、上顎小臼歯(じょうがくしょうきゅうし)に比べて、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の発達が著しく不良のため頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)との間の差が顕著となり、犬歯(けんし)と類似した形態をとることがあります。
  また、歯冠軸(しかんじく)は舌側(ぜっそく)に傾斜し、頬側咬頭頂(きょうそくこうとうちょう)の位置も舌側(ぜっそく)に片寄ります。

 


 歯冠(しかん)の長径(ちょうけい)および近遠心径(きんえんしんけい)は上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)に比べて大差ないが、頬舌径(きょうぜつけい)は著しく小さく小臼歯(しょうきゅうし)で最も小さいです。


③ 歯冠頬側面(しかんきょうそくめん)の外形は上顎小臼歯(じょうがくしょうきゅうし)と大差はないですが、歯冠舌側面(しかんぜっそくめん)は舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の発達が悪いため、低く狭くなって全体に丸みを帯びています。

 また、舌側(ぜっそく)からみると咬合面(こうごうめん)や隣接面(りんせつめん)が広い範囲で観察されます。

 


 舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の高さは頬側咬頭(きょうそくこうとう)の約70%であり、歯冠隣接面(しかんりんせつめん)からみた場合、頬側縁(きょうそくえん)の舌側(ぜっそく)への傾斜がかなり強く、歯冠軸(しかんじく)と歯根軸(しこんじく)が一直線にならずに角度をもって交わります。

  すなわち、上顎小臼歯(じょうがくしょうきゅうし)に比べて歯冠(しかん)は舌側(ぜっそく)に傾いています。こちらの形態差は咬合(こうごう)に適応しています。

 


 咬合面(こうごうめん)からみると、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の発達不良によって舌側半(ぜっそくはん)の近遠心径(きんえんしんけい)と頬舌径(きょうぜつけい)が小さいです。

 

  こちらのため近心縁(きんしんえん)と遠心縁(えんしんえん)が舌側(ぜっそく)に向かって急に集合し、扇形(おおぎじょう)あるいは卵円形(らんえんけい)をとります。

 

  また、頬側咬頭(きょうそくこうとう)が舌側(ぜっそく)寄りにあるために頬側面(きょうそくめん)の大部分がみえ、咬合面観(こうごうめんかん)の頬側(きょうそく)約1/3は頬側面(きょうそくめん)が占めます。

 

 

 ⑤より、固有咬合面(こゆうこうごうめん)はかなり舌側(ぜっそく)に片寄り、舌側(ぜっそく)の約2/3を占めます。

 

そちらの外形は、頬側縁(きょうそくえん)を底辺とし、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)を頂点とする不等辺三角形(ふとうへんさんかっけい)に類似します。

 


近心縁(きんしんえん)と舌側縁(ぜっそくえん)は自然に移行しており両者の境界はほとんど不明です。

 

 


 舌側咬頭(ぜっそくこうとう)が近心(きんしん)に片寄って位置しているため、頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)の走行は食い違い、両者を境する中心溝(ちゅうしんこう)は、直線的でなくS字状に彎曲(わんきょく)しながら近心頬側(きんしんきょうそく)から遠心舌側(えんしんぜっそく)に経過します。

 


 遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)の舌側(ぜっそく)の末端部(まったんぶ)がわずかに肥厚(ひこう)して、遠心舌側隅角部(えんしんぜっそくぐうかくぶ)に小さな結節(けっせつ)(副咬頭)(ふくこうとう)をつくることがあります。

 


 歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面は卵円形(らんえんけい)です。

 


 歯根(しこん)は近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)された円錐形(えんすいけい)で、近心面(きんしんめん)の舌側(ぜっそく)寄りには縦に走るかなり深い溝(こう)が出現することがあります。

 


 歯髄腔(しずいくう)の髄室(ずいしつ)は歯冠(しかん)の外形に一致するが、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の発達が不良なため舌側髄室角(ぜっそくずいしつかく)はみられません。

 

 根管(こんかん)は単純根管(たんじゅんこんかん)が多いが、分岐根管(ぶんきこんかん)もみられます。

 

 


      下顎第二小臼歯(かがくだいにしょうきゅうし)

 下顎第一小臼歯(かがくだいいちしょうきゅうし)と比較すると舌側半(ぜっそくはん)の発達がよく、頬側半(きょうそくはん)との差は少なくなります。


  特に、舌側半(ぜっそくはん)の近遠心径(きんえんしんけい)は長くなることもあります。


  こちらは、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の発達が下顎第一小臼歯(かがくだいいちしょうきゅうし)より良好なためだけでなく、遠心舌側隅角部(えんしんぜっそくぐうかくぶ)に生じる副咬頭(ふくこうとう)の発達にもよります。副咬頭(ふくこうとう)の発達が著しい場合には3咬頭歯(3ことうし)となります。

 


 隣接面(りんせつめん)からみると、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の高さと頬側咬頭(きょうそくこうとう)の高さとの差が少なくなりM字形に近づくが、上顎(じょうがく)ほどではないです。

 


 咬合面(こうごうめん)の外形は、近心縁(きんしんえん)と遠心縁(えんしんえん)がほぼ平行となり、角のとれた五角形(ごかっけい)あるいは正方形(せいほうけい)に類似します。


 固有咬合面(こゆうこうごうめん)は下顎第一小臼歯(かがくだいいちしょうきゅうし)と同様、舌側(ぜっそく)の約2/3を占め、頬側(きょうそく)の約1/3には頬側面(きょうそくめん)が観察されます。

 


 副咬頭(ふくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の位置と発達程度には差異(さい)がみられ、咬合面(こうごうめん)の形態は多様となります。

 
  頬側1咬頭(きょうそく1こうとう)、舌側2咬頭(ぜっそく2こうとう)で3咬頭化(3こうとうか)した場合には、両咬頭(りょうこうとう)を分ける舌側溝(ぜっそくこう)がつくられ中心溝(ちゅうしんこう)との合流点に中心小窩(ちゅうしんしょうか)をつくります。中心溝(ちゅうしんこう)は中心小窩(ちゅうしんしょうか)のところで折れ曲がってV字形となり、溝(こう)の全形はY字形となります。

 

 

  こちらの場合、舌側溝(ぜっそくこう)は舌側面(ぜっそくめん)まで延長し舌側面溝(ぜっそくめんこう)となることが多いです。

 

 

  舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の発達が良好でも副咬頭(ふくこうとう)がほとんど分化(ぶんか)していない場合には、頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)は相対(そうたい)し、中心溝(ちゅうしんこう)は近心(きんしん)から遠心(えんしん)に一直線に走ります。

 

 

  したがって、辺縁隆線(へんえんりゅうせん)との間にできる近心縁(きんしんえん)の副溝(ふくこう)とともに溝(こう)の形は上顎小臼歯(じょうがくしょうきゅうし)のようにH字形となります。

 

 

  また、舌側(ぜっそく)にある2つの咬頭(こうとう)の発達がともに不良の場合には、中心溝(ちゅうしんこう)は舌側(ぜっそく)に凸彎(とつわん)したU字溝(こう)となります。

 

 

 

  それぞれの頻度は、H字形が最も多く全体の約50%を占め、次いでY字形(30%)、U字形(20%)の順です。なお、下顎第二小臼歯(かがくだいにしょうきゅうし)の中心溝(ちゅうしんこう)は、下顎第一小臼歯(かがくだいいちしょうきゅうし)のように中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)によって分断されることはほとんどないです。

 


 歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面は、舌側半(ぜっそくはん)の発達が良好のため、下顎第一小臼歯(かがくだいいちしょうきゅうし)の卵円形(らんえんけい)から長円形(ちょうえんけい)に変わります。

 


 歯根(しこん)は近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)された円錐形(えんすいけい)で、普通は各面とも平坦です。また、ほとんど単純根管(たんじゅんこんかん)です。

 

 

 

    小臼歯(しょうゆうし)にみられる諸形態


 横隆線(おうりゅうせん):頬側咬頭(きょうそくこうとう)の中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の
中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)が連合(れんごう)した連合隆線(れんごうりゅうせん)で、霊長類に多いです。


  ヒトでは、中心溝(ちゅうしんこう)で分断されることが多く出現はまれです。


 小臼歯(しょうきゅうし)の歯根(しこん)の数:類人猿(るいじんえん)やニホンザルなどの高等霊長類(こうとうれいちょうるい)では、上顎小臼歯(じょうがくしょうきゅうし)の歯根(しこん)は3根(3こん)、下顎小臼歯(かがくしょうきゅうし)は近心根(きんしんこん)、遠心根(えんしんこん)の2根(2こん)です。

 

 

 

 

 研究者によれば、ヒトでは、上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)の半数が頬側根(きょうそくこん)と舌側根(ぜっそくこん)の2根(2こん)で、3根性(3こんせい)の歯が約1%であり、ほかはほとんどが単根歯(たんこんし)です。

 

 

 また、上顎第二小臼歯(じょうがくだいにしょうきゅうし)では2根(2こん)が約3%、3根(3こん)が約0.03%、下顎第一小臼歯(かがくだいいちしょうきゅうし)では頬舌的2根(きょうぜつてき2こん)が0.004%、近遠心的2根(きんえんしんてき2こん)が0.003%、3根(3こん)が0.001%、台状根(だいじょうし)が0.004%、下顎第二小臼歯(かがくだいにしょうきゅうし)では2根(2こん)が0.002%、3根(3こん)が0.0003%あるが、ほとんどが単根歯(たんこんし)です。

 


 介在結節 (かいざいけっせつ)(辺縁結節)(えんえんけっせつ):横副溝(おうふくこう)とともに頬側副溝(きょうそくふくこう)が辺縁隆線(へんえんりゅうせん)を越えて隣接面(りんせつめん)に及ぶ場合、こちらの2つの溝(こう)にはさまれた辺縁隆線(へんえんりゅうせん)が限局的(げんきょくてき)に肥厚(ひこう)して、介在結節(かいざいけっせつ)または辺縁結節(へんえんけっせつ)とよばれる小さな結節(けっせつ)をつくることがあります。

 

 

 上顎第一小臼歯(じょうがくだいいちしょうきゅうし)の近心(きんしん)に多くみられ、まれに上顎第二小臼歯(じょうがくだいにしょうきゅうし)の遠心(えんしん)などにもみられます。

 


④ 中心結節(ちゅうしんけっせつ):下顎第二小臼歯(かがくだいにしょうゆうし)の咬合面(こうごうめん)に1~4%ほど出現することもあります。破折(はこつ)や咬耗(こうもう)によって露髄(ろずい)することがあります。

 

 


⑤ 下顎小臼歯(かがくしょうきゅうし)の舌側副咬頭(ぜっそくふくこうとう):辺縁隆線(へんえんりゅうせん)の一部が発達したもので、舌側(ぜっそく)の遠心隅角部(えんしんぐうかくぶ)にあり、小結節状(しょうけっせつじょう)のものから舌側(ぜっそく)の主咬頭(しゅこうとう)より大きいものまである。ただし、咬頭(こうとう)の高さは常に主咬頭(しゅこうとう)が高いです。

 

 

 

 小臼歯(しょうきゅうし)の退化:小臼歯(しょうきゅうし)の先天欠如(せんてんけつじょ)は、下顎第二小臼歯(かがくだいにしょうきゅうし)で2%弱、上顎第二小臼歯(じょうがくだいにしょうきゅうし)で1%強であり、第一小臼歯(だいいちしょうきゅうし)は上下とも0.1%程度です。

 

 

 

 

 


 大臼歯(だいきゅうし)


   上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)


      上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)は、4個の咬頭(こうとう)(近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)、遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)、近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)、遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう))をもつ平行六面体(ろくめんたい)に類似した歯冠(しかん)と、3根(3こん)の歯根(しこん)(近心頬側根(きんしんきょうそくこん)、遠心頬側根(えんしんきょうそくこん)、舌側根(ぜっそくこん))とからなります。

 

1.歯冠(しかん)
 歯冠(しかん)の外形(がいけい)は、近遠心径(きんえんしんけい)が頬舌側(きょうぜつそく)よりやや短い平行六面体(ろくめんたい)で、遠心頬側(えんしんきょうそく)と近心舌側溝(きんしんぜっそくこう)からやや圧平(あっつぺい)されるので、咬合面(こうごうめん)の外形(がいけい)は菱形(ひしがた)または平行四辺形に似ています。

 

 歯冠(しかん)の頬側半(きょうそくはん)と舌側半(ぜっそくはん)にそれぞれ2咬頭(2こうとう)、合計4咬頭(4こうとう)あり、位置によって近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)、遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)、近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)、遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)と名づけられます。

 


 4つの咬頭(こうとう)のうち、面積は遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)が最も小さく、近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)が最も大きいです。

 


  頬側(きょうそく)の2つの咬頭(こうとう)の大きさはその中間にあり、近心(きんしん)のほうがやや大きいです。

 

 咬頭(こうとう)の高さは、遠心側(えんしんそく)より近心側(きんしんそく)が、また舌側(ぜっそく)より頬側(きょうそく)のほうが高いです。


1)頬側面(きょうそくめん)
  頬側面(きょうそくめん)の外形(がいけい)は咬合縁(こうごうえん)を底辺(ていへん)とした台形(だいけい)で、歯頸縁(しけいえん)は著しくくびれています。


  咬合縁(こうごうえん)は近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)と遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)によって2つの山がつくられるのでW字形になります。

 

 

  遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)より近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)のほうがやや高いので、両咬頭頂(りょうこうとうちょう)を結んだ直線は、遠心側(えんしんそく)に向かって歯頸側(しけいそく)に傾斜(けいしゃ)します。


  こちらの傾斜(けいしゃ)は後方(こうほう)の歯ほど急になります。


  また、近心縁(きんしんえん)はほぼまっすぐであるが、遠心縁(えんしんえん)はやや凸彎(とつわん)するため、咬合縁(こうごうえん)と近遠心縁(きんえんしんえん)とでつくられる隅角(ぐうかく)は近心(きんしん)のほうが鋭く、遠心(えんしん)は丸みを帯びて隅角徴(ぐうかくちょう)が明瞭となります。

 

 

 

 

 頬側面(きょうそくめん)の両側(りょうそく)には、咬頭頂(こうとうちょう)から縦(たて)に走る頬側面隆線(きょうそくめんりゅうせん)があるが、そちらの発達はあまりよくないため、頬側面(きょうそくめん)における近遠心方向(きんえんしんほうこう)の豊隆(ほうりゅう)はあまり著しくないです。

 

 

 


2)舌側面(ぜっそくめん)
  舌側面(ぜっそくめん)の外形は頬側面(きょうそくめん)とほぼ同じであるが、頬側面(きょうそくめん)よりも面積が狭いです。豊隆(ほうりゅう)が強く、隣接面(りんせつめん)と自然に移行して丸みを帯び、そちらの境界は不明瞭です。 


  咬合縁(こうごうえん)には2つ舌側咬頭(ぜっそくこうとう)に相当する2つの山がみられるが、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)は頬側咬頭(きょうそくこうとう)より低く、そちらの頂点は鈍円(どんえん)です。

 

 

  遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)は近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)より高さ、幅ともに小さいため、頬側面(きょうそくめん)と同様、2つの咬頭頂(こうとうちょう)を結んだ線は遠心側(えんしんそく)に向かって歯頸側(しけいそく)に傾き、そちらの程度は頬側面(きょうそくめん)より強くて、後方の歯ほど大きいです。

 

 

 


  舌側面(ぜっそくめん)の中央より遠心側(えんしんそく)寄りには、近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)と遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)の分界溝(ぶんかいこう)(舌側溝)(ぜっそくこう)の延長である舌側面溝(ぜっそくめんこう)がある。こちらの溝(こう)は自然に消失することが多いが、まれに舌側面小窩(ぜっそくめんしょうか)に終わる場合や、歯根(しこん)の舌側面(ぜっそくめん)に延長する場合などがあります。

 

  近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)では、舌側面溝(ぜっそくめんこう)よりも近心側(きんしんそく)寄りにカラベリー結節(けっせつ)という結節(けっせつ)が出現することがあります。こちらの結節(けっせつ)の出現率は、モンゴロイドよりもコーカソイドのほうが高いです。

 

 

 


3)隣接面(りんせつめん)
 近心面(きんしんめん)からみた外形(がいけい)は長方形(ちょうほうけい)で、頬舌径(きょうぜつけい)が長径(ちょうけい)よりはるかに大きく、歯頸縁(しけいえん)の長さは長径(ちょうけい)の約2倍あります。

 

 


 頬側縁(きょうそくえん)はほぼ直線的で、頬側面隆線(きょうそくめんりゅうせん)に一致して歯頸側(しけいそく)1/4付近からわずかに舌側(ぜっそく)に傾斜しています。舌側縁(ぜっそくえん)は舌側面(ぜっそくめん)の豊隆(ほうりゅう)に一致して舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の1/2の高さから頬側(きょうそく)に傾斜しています。

 

 

  咬合縁(こうごうえん)は、頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)と近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)の尾根(おね)にあたり、全体として凹孤(おうこ)を描きます。

 

 

 こちらの凹孤(おうこ)の中央部には、近心面溝(きんしんめんこう)や介在結節(かいざいけっせつ)により、1~2個の小波状(しょうはじょう)の隆起(りゅうき)がみられることがあります。

 


 遠心面(えんしんめん)からみた外形も近心面(きんしんめん)とほぼ同じであるが、幅、高さは近心面(きんしんめん)よりやや小さく、面積も狭いです。

 

 


 こちらのため、近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)ならびに近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)の一部を観察できます。遠心面(えんしんめん)は近心面(きんしんめん)より豊隆(ほうりゅう)しています。

 

 


  固有隣接面(こゆうりんせつめん)は頬側縁(きょうそくえん)と舌側縁(ぜっそくえん)に沿ってみられる頬側面(きょうそくめん)と舌側面(ぜっそくめん)の一部、および咬合縁(こうごうえん)にみられる頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の一部を除いた接触点(せっしょくてん)より下の領域で、全体に咬合縁(こうごうえん)を底辺(ていへん)とする台形(だいけい)となります。

 

 

 

 


4)咬合面
 咬合面(こうごうめん)からみた外形(がいけい)は、角のとれた平行四辺形(へいこうしえへんけい)で、頬舌側(きょうぜつはん)は近遠心径(きんえんしんけい)よりもやや大きいです。

 


 咬合面(こうごうめん)には、4つの隅角部(ぐうかくぶ)に4つの咬頭(こうとう)があります。

 


   遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)を除くほかの3つの咬頭(こうとう)では、咬頭頂(こうとうちょう)から咬合面中央部(こうごうめんちゅうおうぶ)に向かって中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)が走り、そちらの両側(りょうそく)には副隆線(ふくりゅうせん)が存在しています。副隆線(ふくりゅうせん)は発達が悪くしばしば欠如(けつじょ)することもあります。

 

 


  遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)の中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)は、近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)の遠心副隆線(えんしんふくりゅうせん)と結合して、斜走隆線(しゃそうりゅうせん)または対角隆線(たいかくりゅうせん)という1本の連合隆線(れんごうりゅうせん)となります。

 

 

 

 まれに、遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)と近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)の中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)どうし、あるいは遠心副隆線(えんしんふくりゅうせん)どうしが結合することもあります。

 

 

 

 なお、遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)は発達が悪く、全体に低い円形(えんけい)の隆起(りゅうき)でそちらの表面はほぼ平滑(へいかつ)であり、個々の隆線(りゅうせん)を区別することはできません。


 4つの咬頭(こうとう)は、お互いに深い溝(こう)によって分けられます。


 近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)と近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)との間の溝(こう)を近心溝(きんしんこう)、遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)と遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)との間の溝(こう)を遠心溝(えんしんこう)といい、合わせて中心溝(ちゅうしんこう)を形成します。

 

 近心溝(きんしんこう)は隣接面(りんせつめん)に及び近心面溝(きんしんめんこう)となります。また、近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)と遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)との間の溝(こう)を頬側溝(きょうそくこう)、近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)と遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)の間を斜め(ななめ)に走る溝(こう)を遠心舌側溝(えんしんぜっそくこう)といい、頬側溝(きょうそくこう)の頬側端(きょうそくたん)は頬側面(きょうそくめん)に達して頬側面溝(きょうそくめんこう)に、遠心舌側溝(えんしんぜっそくこう)の舌側端(ぜっそくたん)は舌側面(ぜっそくめん)に延長して舌側面溝(ぜっそくめんこう)となります。

 

 

 

 頬側溝(きょうそくこう)、近心溝(きんしんこう)および遠心溝(えんしんこう)はお互いY字形に交わり、こちらの合流点を中心小窩(ちゅうしんしょうか)、皿状(さらじょう)に凹んで(くぼんで)いる合流点の領域を中心窩(ちゅうしんか)といいます。同様に、遠心溝(えんしんこう)と遠心舌側溝(えんしんぜっそくこう)との合流点を遠心舌側小窩(えんしんぜっそくしょうか)といいます。

 

 

 頬側溝(きょうそくこう)、近心溝(きんしんこう)、遠心溝(えんしんこう)および遠心舌側溝(えんしんぜっそくこう)との合流点を遠心舌側小窩(えんしんぜっそくしょうか)といいます。

 

 

 


 頬側溝(きょうそくこう)、近心溝(きんしんこう)、遠心溝(えんしんこう)および遠心舌側溝(えんしんぜっそくこう)がつくる咬合面溝(こうごうめんこう)は、歪(わい)なH字形となります。

 

 

 


 咬合面(こうごうめん)の近遠心溝(きんえんしんこう)には辺縁隆線(へんえんりゅうせん)が存在しており、咬頭(こうとう)と辺縁隆線(へんえんりゅうせん)との間には副溝(ふくこう)があります。

 

 

 

 

 近心(きんしん)には近心頬側副溝(きんしんきょうそくふくこう)と近心舌側副溝(きんしんぜっそくふくこう)ができ、こちらの副溝(ふくこう)と近心溝(きんしんこう)との合流点を近心小窩(きんしんしょうか)といい、皿状(さらじょう)に凹んで(くぼんで)いる合流点の領域を近心窩(きんしんか)といいます。

 

 

 同様に遠心副溝(えんしんふくこう)と遠心溝(えんしんこう)との合流点を遠心小窩(えんしんしょうか)といい、遠心舌側小窩(えんしんぜっそくしょうか)を含む領域を遠心窩(えんしんか)といいます。

 

 


 辺縁隆線(へんえんりゅうせん)は、しばしばそちら一部が限定的(げんていてき)に肥厚(ひこう)し、介在結節(かいざいけっせつ)をつくります。隣接面(りんせつめん)からみて咬合縁(こうごうえん)の中央部付近に小波状(しょうはじょう)の隆起(りゅうき)がみられるのは介在結節(かいざいけっせつ)のためです。

 

 


 上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)は、舌側面全体(ぜっそくめんぜんたい)がかなり頬側(きょうそく)に傾いているため、咬合面(こうごうめん)からみると広い範囲にわたって舌側面(ぜっそくめん)がみられますが頬側面(きょうそくめん)はわずかしか観察できません。したがって、固有咬合面(こゆうこうごうめん)は頬側(きょうそく)に片寄って位置します。

 

 

  固有咬合面(こゆうこうごうめん)の外形(がいけい)は平行四辺形もしくは菱形(ひしがた)に近く、長いほうの対角線(たいかくせん)は近心頬側(きんしんきょうそく)から遠心舌側(えんしんぜっそく)に向かっています。こちらため近心頬側隅角(きんしんきょうそくぐうかく)と遠心舌側隅角(えんしんぜっそくぐうかく)は、それぞれ遠心頬側偶角(えんしんきょうそくぐうかく)と近心舌側隅角(きんしんぜっそくぐうかく)より鋭くとがっています。

 

 


2.歯頸部(しけいぶ)
  歯頸線(しけいせん)は頬側(きょうそく)と舌側(ぜっそく)ではほぼ直線であるが、頬側(きょうそく)では中央部で歯根(しこん)の分岐部(ぶんきぶ)に向かって根間突起(こんかんとっき)(エナメル突起(とっき))を出すことがあります。

 

 隣接面(りんせつめん)では彎曲(わんきょく)の程度は弱いですが、直線的な遠心面(えんしんめん)と比べると近心面(きんしんめん)には彎曲(わんきょく)があり、差異(さい)が明らかです。

 


 歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面(すいへいだんめん)は角のとれた長方形で、頬側辺(きょうそくへん)、舌側辺(ぜっそくへん)、遠心辺(えんしんへん)のほぼ中央には凹みがあり、そちらの程度は遠心辺(えんしんへん)のものが最も多いです。

 

 

 


3.歯根(しこん)
 上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)の歯根(しこん)は、頬側(きょうそく)に近心頬側根(きんしんきょうそくこん)と遠心頬側根(えんしんきょうそくこん)、舌側(ぜっそく)に舌側根(ぜっそくこん)の合計3本あります。

 

 上顎第一大臼歯(だいきゅうし)では、それぞれの歯根(しこん)は歯根(しこん)の歯頚側(しけいそく)1/3の近くで分岐(ぶんき)します。

 


 歯頚側(しけいそく)から分岐部(ぶんきぶ)までの間を根幹(こんかん)といい、この距離は遠心(えんしん)の歯ほど長くなります。

 2本の頬側根(きょうそくこん)はともに近遠心的圧平(きんえんしんてきあっぺい)が強く、水平断面(すいへいだんめん)は頬舌方向(きょうぜつほうこう)に長い楕円形(だえんけい)である。頬側2根(きょうそく2こん)の離開度(りかいど)は弱いです。

 

 

 2根(2こん)はほぼ平行しているか、わずかに離開(りかい)している程度で、根尖(こんせん)に近い部分では近心頬側根(きんしんきょうそくこん)が屈曲(くっきょく)して2根(2こん)が集まるような傾向があります。なお、遠心頬側根(えんしんきょうそくこん)は近心頬側根(きんしんきょうそくこん)に比べて細く短いです。

 

 舌側根(ぜっそくこん)は3根(3こん)中、最も長く、頬舌的(きょうぜつけい)にやや圧平(あっぺい)されて、水平断面(すいへいだんめん)は近遠心方向(きんえんしんほうこう)に長い楕円形(だえんけい)となる。

 

 舌側根(ぜっそくこん)の舌側面(ぜっそくめん)には縦に走る浅い根面溝(こんめんこう)があります。舌側根(ぜっそくこん)は舌側方向(ぜっそくほうこう)に斜めに分岐(ぶんき)しており、頬側根(きょうそくこん)との間の離開度(りかいど)は頬側2根間(きょうそく2こんかん)の離開度(りかいど)より大きいです。

 

4.歯髄腔(しずいくう)
  髄室(ずいしつ)と根管(こんかん)は明らかに区別できます。
髄室(ずいしつ)はほぼ歯冠(しかん)の外形の縮図で、頬舌径(きょうぜつけい)が近遠心径(きんえんしんけい)より長いです。上下の高さは低く、特に中央部の上下間距離はかなり短いです。髄室(ずいしつ)には各咬頭(かくこうとう)に相当して髄室角(ずいしつかく)がみられます。

 


  根管(こんかん)は単純根幹(たんじゅんこんかん)を原則とするが、近心頬側根(きんしんきょうそくこん)では約半数が分岐根幹(ぶんきこんかん)となっており、側枝(そくし)や分岐根管(ぶんきこんかん)も多く、網状根管もしばしばみられます。

 

   上顎大臼歯間(じょうがくだいきゅうし)の形態の変化

 

 上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)の基本形態は第一大臼歯(だいきゅうし)にみられるが、第二および第三大臼歯(だいきゅうし)の形態もお互いよく似ています。

 

 第一大臼歯(だいきゅうし)を基準として、第二大臼歯、第三大臼歯(だいきゅうし)の形態的変化を比較すると、歯冠(しかん)では遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)が退化し、また歯冠(しかん)の近遠心径(きんえんしんえけい)が縮小します。

 

 特に第二大臼歯(だいにだいきゅうし)と第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)の間の差が著しいです。 


 遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)の退化傾向が遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど強く、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)ではこちらの咬頭(こうとう)が55%の割合で消失して3咬頭(3こうとう)となります。

 

 咬頭(こうとう)の退化と関連して、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど浮彫像(うきぼりぞう)が単純化(たんじゅんか)します。

 

 頬側面(きょうそくめん)からみると、歯冠(しかん)の遠心半(えんしんはん)の発達は近心半(きんしんはん)の発達よりも劣り、第一大臼歯(だいいちだいきゅうし)でも遠心側(えんしんそく)にる2つの咬頭(こうとう)は近心側(きんしんそく)の2つの咬頭(こうとう)より高さが低く鈍円(どんえん)であるが、退化形の第二大臼歯(だいにだいきゅうし)では両者の差がいっそう著しくなります。

 

 


 こちらのため、近心咬頭頂(きんしんこうとうちょう)と遠心咬頭頂(えんしんこうとうちょう)とを結ぶ直線は、遠心(えんしん)の歯ほど傾斜が強くなります。

 

 

 

 また、頬側面溝(きょうそくめんこう)および舌側面溝(ぜっそくめんこう)の位置も遠心(えんしん)に片寄ってきます。歯冠(しかん)から歯根(しこん)へ移行します。

 

 近心縁(きんしんえん)の屈曲度(くっきょくど)は、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど角度が大きくなり、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)では180°の直線状となります。

 

 

 

 


 咬合面(こうごうめん)からみると、近遠心径(きんしんけい)が縮小して細長くなり、遠心頬側隅角(えんしんきょうそくぐうかく)および遠心舌側隅角(えんしんぜっそくぐうかく)はますます鈍円(どんえん)となります。


 また、全体のなかで頬側面(きょうそくめん)と舌側面(ぜっそくめん)の占める割合が大きくなり、固有咬合面(こゆうこうごうめん)の占める割合が小さくなります。

 

 つまり、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど頬側咬頭(きょうそくこうとう)と舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の間の距離が縮小し、4個の咬頭(こうとう)が咬合面(こうごうめん)の中心に向かって集まってくるため固有咬合面面積(こゆうこうごうめんめんせき)は減少します。


 隣接面(りんせつめん)からみると、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど頬側咬頭頂(きょうそくこうとうちょう)と舌側咬頭頂(ぜっそくこうとうちょう)とがお互いに接近し、頬舌側縁(きょうぜっそくえん)は咬合縁(こうごうえん)の近くで咬合面(こうごうめん)の中心に向かって強く傾斜します。

 

 こちらの傾向は遠心面(えんしんめん)からみた場合に特に明らかです。


 歯根歯頚部(しこんしけいぶ)の水平断面は、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど遠心辺(えんしんへん)と舌側辺(ぜっそくへん)が短くなり、丸みを帯びます。

 


 歯根(しこん)は遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど短くなって離開度(りかいど)が小さくなり、癒合(ゆごう)する傾向が強くなります。また、歯根分岐部(しこんぶんきぶ)は根尖側(こんせんそく)に移動し、根幹(こんかん)が長くなります。

 

 歯根(しこん)が癒合(ゆごう)する場合には、頬側(きょうそく)の2根(2こん)が癒合(ゆごう)することが最も多く、遠心頬側根(えんしんきょうそくこん)と舌側根(ぜっそくこん)、近心頬側根(きんしんきょうそくこん)と舌側根(ぜっそくこん)の癒合(ゆごう)が先行することもあります。

 

 

 第二大臼歯(だいにだいきゅうし)では20%が2根(2こん)、15%が1根(1こん)であり、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)では5%が1根(1こん)で、2根(2こん)と3根(3こん)が20%、4根(4こん)が5%ほどみられます。

 

 

 


 臼傍結節(きゅうぼうけっせつ)・中心結節(ちゅうしんけっせつ)・エナメル滴(じょう)などの異常形態(いじょうけいたい)の出現率も、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど高くなります。

 

 

 第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)は最も退化形(たいけけい)や奇形(きけい)を示すことが多く、半数ほどは先天的(せんてんてき)に欠如(けつじょ)します。

 

 前述しました諸形態の退化は、すべてが同じ速度、同じ方向で1個の歯に出現するものではないです。

 たとえば、1個の歯において遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)と遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)の退化が同じ程度で同時に出現することはまれで、

 

 むしろ両者の退化傾向は相反することが多く、前者の退化が著しい場合には後者の発達は比較的良好、逆に前者の発達が良好なものは後者の退化が著しいのが普通です。

 

  下顎大臼歯(かがくだいきゅうし) 


   下顎大臼歯(かがくだいきゅうし)の基本形態は5咬頭(5こうとう)で、頬側半(きょうそくはん)に3咬頭(3こうとう)(近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)、遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)、遠心咬頭(えんしんこうとう))、舌側半(ぜっそくはん)に2咬頭(2こうとう)(近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)、遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう))をもちます。

 

 

   5つの咬頭(こうとう)のうち、面積は近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)が最も広く、次いで舌側(ぜっそく)の2つの咬頭(こうとう)と遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)がほぼ同じ大きさとなり、遠心咬頭(えんしんこうとう)が最も小さいです。

 

 

   咬頭(こうとう)の高さは頬側(きょうそく)より舌側(ぜっそく)、遠心側(えんしんそく)より近心側(きんしんそく)のほうが高いです。


   歯根(しこん)は2根(2こん)(近心根(きんしんこん)、遠心根(えんしんこん))です。

 

 

1. 歯冠(しかん)


  歯冠(しかん)の外形(がいけい)は、近遠心径(きんえんしんけい)が頬舌径(きょうぜつけい)より長い直方体(ちょくほうたい)で、頬側面(きょうそくめん)、舌側面(ぜっそくめん)、近心面(きんしんめん)、遠心面(えんしんめん)、咬合面(こうごうめん)が区別されます。

 

1)頬側面(きょうそくめん)


  頬側面(きょうそくめん)は、咬合縁(こうごうえん)、近心縁(きんしんえん)、遠心縁(えんしんえん)、歯頸縁(しけいえん)に区分されます。
外形(がいけい)は咬合縁(こうごうえん)を底辺(ていへん)として近遠心径(きんえんしんけい)が長い台形(だいけい)です。

 

 

   頬側面(きょうそくめん)からみると、咬合縁(こうごうえん)の奥(おく)に近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)、遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)の2つの咬頭(こうとう)を含む(ふくむ)咬合面(こうごうめん)の一部がみえます。

 

 

 

 

  こちらは舌側咬頭(ぜっそくこうとう)が頬側咬頭(きょうそくこうとう)より高いためです。

 

  咬合縁(こうごうえん)の3つの頬側咬頭(きょうそくこうとう)は比較的鈍円(どんえん)で、近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)は遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)より、遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)は遠心咬頭(えんしんこうとう)より高いので、3咬頭頂(3こうとうちょう)を結んだ直線は遠心側(えんしんそく)に向かって歯頸側(しけいえん)に傾斜します。

 

 

  また、近心縁(きんしんえん)と遠心縁(えんしんえん)は、咬頭側(こうとうそく)でそれぞれ近心側(きんしんそく)、遠心側(えんしんそく)に向かってやや凸彎(とつわん)します。咬合縁(こうごうえん)と近遠心縁(きんえんしんえん)とでつくる隅角(ぐうかく)は、近心(きんしん)が鋭く、遠心(えんしん)は丸みを帯びて隅角徴(ぐうかくちょう)が明瞭です。

 

 

  頬側面(きょうそくめん)には縦に走る2本の溝(こう)があります。中央よりやや近心(きんしん)寄りにある溝(こう)は近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)と遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)との分界溝(ぶんかいこう)(頬側溝)(きょうそくこう)が延長したもので、頬側面溝(きょうそくめんこう)といい、歯冠(しかん)の約1/2の高さにある浅い頬側面小窩(きょうそくめんしょうか)で終わります。

 

 

  そちらの下縁(かえん)には歯帯(したい)(頬側面歯頸隆線)(きょうそくめんしけいりゅうせん)が近遠心方向(きんえんしんほうこう)に走り、頬側面(きょうそくめん)の最大豊隆部(さいだいほうりゅうぶ)となります。

 

 

  遠心(えんしん)にある浅い溝(こう)は、遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)と遠心咬頭(えんしんこうとう)との分界溝(ぶんかいこう)(遠心頬側溝)(えんしんきょうそくこう)が延長(えんちょう)したもので、遠心頬側面溝(えんしんきょうそくめんこう)といい、遠心方向(えんしんほうこう)に彎曲(わんきょく)して歯冠(しかん)の約1/2の高さで自然に消失します。

 

  なお、頬側咬頭(きょうそくこうとう)と遠心咬頭(えんしんこうとう)からは頬側面溝(きょうそくめんこう)に平行に鈍い隆線(りゅうせん)が縦に走り、頬側面全体(きょうそくめんぜんたい)には近遠心方向(きんえんしんほうこう)に豊隆(ほうりゅう)します。

 

 

2) 舌側面(ぜっそくめん)
  舌側面(ぜっそくめん)の外形は頬側面(きょうそくめん)とほぼ同様であるが、頬側面(きょうそくめん)より高さがあって幅が狭く、また、面全体(めんぜんたい)の豊隆(ほうりゅう)が少なく平坦に近いです。


  咬合縁(こうごうえん)には頬側咬頭(きょうそくこうとう)より先鋭な近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)、遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)があります。

 

  近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)は遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)とり幅は狭いが高さは高いので、両咬頭(りょうこうとう)を分ける舌側面溝(ぜっそくめんこう)はやや近心(きんしん)寄りに位置し、歯冠(しかん)のほぼ半分の高さにある最大豊隆部(さいだいほうりゅうぶ)で自然に消失します。


  2つの舌側咬頭頂(ぜっそくこうとうちょう)を結ぶ直線は頬側面(きょうそくめん)と同様、遠心側(えんしんそく)に向かって歯頸側(しけいそく)に傾斜(けいしゃ)します。

 

3) 隣接面(りんせつめん)
 隣接面(りんせつめん)からみた外形(がいけい)は歯頸縁(しけいえん)を底辺(ていへん)とする頬舌径(きょうぜつけい)の長い台形です。

 

 

 頬側縁(きょうそくえん)は歯頸側(しけいそく)1/3までは頬側(きょうそく)に向かって突隆(とつりゅう)しているが、こちらの最大豊隆部(さいだいほうりゅうぶ)からは舌側(ぜっそく)にかなり強く傾斜して頬側咬頭頂(きょうそくこうとうちょう)に達します。

 

 

 舌側縁(ぜっそくえん)は全体として舌側(ぜっそく)に凸彎(とるわん)し、歯頸側(しけいそく)1/2を最大豊隆部(さいだいほうりゅうぶ)とします。

 

 また、咬合縁(こうごうえん)は、頬側(きょうそく)および舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)と辺縁隆線(へんえんりゅうせん)の尾根(おね)に相当(そうとう)し、全体として凹彎(おうわん)します。

 

 

 下顎大臼歯(かがくだいきゅうし)の舌側咬頭(ぜっそくこうとう)の高さは頬側咬頭(きょうそくこうとう)より高いため、両咬頭頂(りょうこうとうちょう)を結んだ直線は舌側(ぜっそく)から頬側(きょうそく)に向かって歯頸側(しけいそく)に傾き、上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)とは逆(ぎゃく)の傾斜(けいしゃ)をとります。


 固有(こゆう)の隣接面(りんせつめん)は、頬側縁(きょうそくえん)、舌側縁(ぜっそくえん)および咬合縁(こうごうえん)に沿って観察(かんさつ)される頬側面(きょうそくめん)、舌側面(ぜっそくめん)および咬合面(こうごうめん)を除いた面で、

 

 歯頸縁(しけいえん)を底辺とする台形(だいけい)となっており、接触点(せっしょくてん)が高位(こうい)にある近心面(きんしんめん)のほうが遠心面(えんしんめん)よりも広く、歯面徴(しめんちょう)が顕著(けんちょ)です。

 


 なお、遠心面(えんしんめん)は近心面(きんしんめん)よりはるかに豊隆(ほうりゅう)しています。

 

 

 

 

4)咬合面(こうごうめん)


 咬合面(こうごうめん)からみた外形(がいけい)は、近遠心径(きんえんしんけい)が頬舌径(きょうぜつけい)よりも大きい角のとれた長方形で、頬側縁(きょうそくえん)は舌側縁(ぜっそくえん)より長く彎曲(わんきょく)の程度も強いです。
       

 こちらは頬側面(きょうそくめん)の豊隆(ほうりゅう)が舌側面(ぜっそくめん)より強いためです。また、近心縁(きんしんえん)はほぼ直線的であるのに対して、遠心縁(えんしんえん)はかなり凸彎(とつわん)します。 

 

 

 こちらの凸彎は、遠心面(えんしんめん)の豊隆(ほうりゅう)が近心面(きんしんめん)よりずっと強い(つよい)ことを示しています。

 

 

 したがって、近心頬側隅角(きんしんきょうそくぐうかく)は遠心頬側隅角(えんしんきょうそくぐうかく)よりも明らかに鋭く突出(とっしゅつ)し、彎曲徴(わんきょくちょう)が顕著(けんちょ)です。

 

 


 咬合面(こうごうめん)からみると、頬側咬頭(きょうそくこうとう)が舌側(ぜっそく)寄りにあって頬側面(きょうそくめん)が舌側(ぜっそく)に強く傾斜しているため、頬側面(きょうそくめん)がかなり広い面積を占めます。

 

 つまり、固有咬合面(こゆうこうごうめん)はかなり舌側(ぜっそく)に片寄って位置することになり、そちらの大きさは咬合面(こうごうめん)からみえる範囲より小さくなります。

 

 固有咬合面(こゆうこうごうめん)の外形(がいけい)は長楕円形(ちょうだえんけい)に近いです。


 咬頭こうとう)は、中心溝(ちゅうしんこう)を境にして、頬側半(きょうそくはん)と舌側半(ぜっそくはん)に分けられ、頬側(きょうそくはん)に3咬頭(3こうとう)(近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)、遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)、遠心咬頭(えんしんこうとう))、舌側(ぜっそく)に2咬頭(2こうとう)(近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)、遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)があります。

 

 

 

 5個の咬頭(こうとう)のうち最小の遠心咬頭(えんしんこうとう)を除くほかの4咬頭頂(4こうとうちょう)からは、咬合面中央部(こうごうめんちゅうおうぶ)に向かってそれぞれ中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)が走り、そちらの両側(りょうそく)に副隆線(ふくりゅうせん)が存在します。

 

 

 

 遠心咬頭(えんしんこうとう)は全体が鈍円(どんえん)な低い隆起(りゅうき)で、個々の隆起(りゅうき)は不明瞭です。

 

 また、近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)はよく発達しているが、遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)は遠心咬頭(えんしんこうとう)や第六咬頭(だいろくこうとう)の存在により不明瞭(ふめいりょう)で、はっきりした隆線(りゅうせん)として存在していることは少なく、低く、細く、痕跡的(こんせきてき)です。

 

 近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)と遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)は頬側溝(きょうそくこう)、遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)と遠心咬頭(えんしんこうとう)とは遠心頬側溝(えんしんきょうそくこう)、近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)と遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)は舌側溝(ぜっそくこう)により分断されます。

 

 

 頬側溝(きょうそくこう)および舌側溝(ぜっそくこう)はそれぞれ頬舌側面(きょうぜっそくめん)に延長して頬側面溝(きょうそくめんこう)および舌側面溝(ぜっそくめんこう)となり、遠心頬側溝(えんしんきょうそくこう)は頬側面(きょうそくめん)に延長して遠心頬側面溝(えんしんきょうそくめんこう)となります。

 

 

 

 中心溝(ちゅうしんこう)と頬側溝(きょうそくこう)、舌側溝(ぜっそくこう)、遠心頬側溝(えんしんきょうそくこう)の交点(こうてん)を近心中心小窩(きんしんちゅうしんしょうか)、中心小窩(ちゅうしんしょうか)、遠心中心小窩(えんしんちゅうしんしょうか)といい、こちらの小窩(しょうか)を中心(ちゅうしん)とした咬合面(こうごうめん)のほぼ中央部(ちゅうおうぶ)の皿状(さらじょう)の凹み(くぼみ)を中心窩(ちゅうしんか)といいます。

 

 

 中心溝(ちゅうしんこう)は、中心小窩(ちゅうしんしょうか)を境に近心溝(きんしんこう)と遠心溝(えんしんこう)に分かれます。

 


 近心溝(きんしんこう)は近心小窩(きんしんしょうか)に終わり、こちらから辺縁隆線(へんえんりゅうせん)と近心咬頭(きんしんこうとう)とを分ける副溝(ふくこう)が頬側(きょうそく)と舌側(ぜっそく)に走ります。

 

 遠心溝(えんしんこう)は遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)に向かい、遠心頬側副溝(えんしんきょうそくふくこう)と遠心舌側副溝(えんしんぜっそくふくこう)との交点のところに遠心小窩(えんしんしょうか)をつくります。


 下顎大臼歯(かがくだいきゅうし)の咬合面浮彫像(こうごうめんうきぼりぞう)の基本形態は5咬頭(5こうとう)で、咬頭(こうとう)の間を分ける咬合面溝(こうごうめんこう)の形態はY字形(Y型)です。

 こちらの基本形態をもつ下顎大臼歯(かがくだいきゅうし)をドリオピテクス型の歯といいます。進化とともに+形(+型)、X字形(X型)に変わると考えられています。

 

 

 

    2.歯頸部(しけいぶ)


 歯頸線(しけいそく)は、頬側(きょうそく)と舌側(ぜっそく)では遠心側(えんしんそく)に向かって根尖側(こんせんそく)に傾斜する。頬側(きょうそく)では、中央部から歯根分岐部(しこんぶんきぶ)に向かってV字状の根間突起(こんかんとっき)(エナメル突起(とっき))が出現します。


 隣接面(りんせつめん)でも彎曲(わんきょく)の程度は弱く、遠心側(えんしんそく)は近心側(きんしんそく)に比べて直線的です。


 歯根歯頸部(しこんしけいぶ)の水平断面は角のとれた四角形(しかっけい)で、頬側辺(きょうそくへん)および舌側辺(ぜっそくへん)のほぼ中央に凹み(こぼみ)があります。

 

 

 

   3.歯根(しこん)


 歯根(しこん)は近心根(きんしんこん)と遠心根(えんしんこん)の2根(2こん)があり、ともに近遠心的(きんえんしんてき)に圧平(あっぺい)されていますが、そちらの程度は近心根(きんしんこん)が強いです。

 

 

 歯根(しこん)の水平断面は頬舌方向(きょうぜつほうこう)に長い楕円形(だえんけい)です。近心根(きんしんこん)は歯根中央部(しこんちゅうおうぶ)からやや遠心(えんしん)に彎曲(わんきょく)しています。

 


 近心根(きんしんこん)と遠心根(えんしんこん)はわずかに離開(りかい)している程度であり、歯根(しこん)が癒合(ゆごう)する場合には頬側面(きょうそくめん)で癒合(ゆごう)して舌側面(ぜっそくめん)に深い溝(こう)がある樋状根(ひじょうこん)が出現します。

 

 なお、下顎第一大臼歯(かがくだいいちだいきゅし)の20%で、遠心根(えんしんこん)から舌側(ぜっそく)に遠心舌側根(えんしんぜっそくこん)が突出することがありモンゴロイド、特にシノドントにみられる。

 

   4.歯髄腔(しずいくう)
 髄室(ずいしつ)ならびに根管(こんかん)は明瞭に区分できます。髄質(ずいしつ)は歯冠(しかん)の外形の縮図で、それぞれの咬頭(こうとう)に一致して髄質角(ずいしつかく)があります。

 

 髄質(ずいしつ)の径(けい)は、頬舌径(きょうぜつけい)が近遠心径(きんえんしんけい)より短く、上下の高さはさらに短くして中央部で特に低いです。咬合面(こうごうめん)の形成に伴って髄質天蓋(ずいしつてんがい)が生まれます。

 


 根管(こんかん)は、歯根(しこん)の圧平(あっぺい)が強い近心根(きんしんこん)は分岐根管(ぶんきこんかん)で2根管(2こんかん)、遠心根(えんしんこん)は単純根管(たんじゅんこんかん)となり、第一大臼歯(だいいちだいきゅうし)の80%、第二大臼歯(だいにだいきゅうし)の77%は3根管(3こんかん)を有します。

 

 

 ただし第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)では3根管(3こんかん)を有するものは約30%に減少します。

 

  下顎大臼歯間(かがくだいきゅうしかん)の形態の変化


 遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど歯の大きさが小さくなります。


 また、歯の長軸(ちょうじく)を垂直にして頬側面(きょうそくめん)あるいは舌側面(ぜっそくめん)からみると、近心咬頭頂(きんしんこうとうちょう)と遠心咬頭頂(えんしんこうとうちょう)とを結んだ線は遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど傾斜が強くなります。

 

 

 さらに、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど遠心咬頭(えんしんこうとう)の退化傾向が強く、こちらの咬頭頂(こうとうちょう)にあたる咬合縁(こうごうえん)の突起(とっき)は鈍円(どんえん)となり、時には欠如(けつじょ)します。

 

 

 そちらと並行して遠心頬側溝(えんしんきょうそくこう)はしだいに遠心(えんしん)に位置を変え、浅く短くなり、やがて消失して4咬頭歯(4こうとうし)となります。

 


 4咬頭歯(4こうとうし)の出現率は、第一大臼歯(だいいちだいきゅうし)で5%、第二大臼歯(だいにだいきゅうし)で50%ほどあり、遠心位(えんしんい)の歯ほど高いです。

 

 ただし、3咬頭(3咬頭)以下になることはない。咬頭(こうとう)の退化に伴い遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど浮彫像(うきぼりぞう)が単純化(たんじゅんか)し、平滑(へいかつ)になります。

 

 咬合面(こうごうめん)からみると、頬舌径(きょうぜつそく)、近遠心径(きんえんしんけい)ともに遠心位(えんしんい)にあるほど小さくなり、隅角(ぐうかく)は丸みを帯びます。

 

 また、それぞれの咬頭(こうとう)の間を境(きょう)する咬合面溝(こうごうめんこう)の形態は基本形のY型(ドリオピテクス型)から+型を経て、X型に変わります。

 

 つまり、第一大臼歯(だいいちだいきゅうし)においては、多くの場合、頬側溝(きょうそくこう)と中心溝(ちゅうしんこう)の交点が舌側溝(ぜっそくこう)と中心溝(ちゅうしんこう)との交点より近心(きんしん)にずれており、

 

 近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)と遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)が接触してV字状に屈曲しているため、舌側溝(ぜっそくこう)と合わせると溝(こう)の形態はY字形となります。

 

 しかし、第二・第三大臼歯(だいきゅうし)においては、中心溝(ちゅうしんこう)と頬側溝(きょうそくこう)・舌側溝(ぜっそくこう)が+形に交差するものや、頬側溝(きょうそくこう)と中心溝(ちゅうしんこう)の交点が舌側溝(ぜっそくこう)と中心溝(ちゅうしんこう)の交点より遠心(えんしん)にあり近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)と遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)が接触するX字形のものが現れます。

 

 第一大臼歯(だいいちだいきゅうし)では、Y型64%、+型35%、第二大臼歯(だいにだいきゅうし)では、Y型4%、+型71%、X型25%、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)では、Y型2%、+型47%、X型51%です。

 

 

 咬合面観(こうごうめんかん)に占める頬側面(きょうそくめん)、舌側面(ぜっそくめん)の割合も遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど大きくなり、逆に固有咬合面(こゆうこうごうめん)の占める割合は小さくなります。

 

 

 

 こちらは、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど舌側咬頭(ぜっそくこうとう)が咬合面(こうごうめん)に向かって傾き、頬側咬頭(きょうそくこうとう)との咬頭頂(こうとうちょう)間距離が縮小するためで、固有咬合面(こゆうこうごうめん)は頬舌的(きょうぜつてき)に圧平(あっぺい)されて細長く(ほそながく)なります。

 

 


 隣接面(りんせつめん)からみると、舌側咬頭(ぜっそくこうとう)と頬側咬頭(きょうそくこうとう)の高さの差は遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど小さくなり、両咬頭頂(りょうこうとうちょう)を結ぶ直線(ちょくせん)は遠心(えんしん)の歯ほど傾斜(けいしゃ)が緩やか(ゆるやか)になります。
 

 


 歯根(しこん)は、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど離開度(りかいど)が小さく、分岐部(ぶんきぶ)は根尖側(こんせんそく)へ移動し、

 

 根管(こんかん)が長くなる。第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)では30%が1根(1こん)となります。また、癒合(ゆごう)する傾向が強くなり、樋状根(ひじょうこん)もみられます。

 

 特に第二大臼歯(だいにだいきゅうし)に多く、日本人では30%ほど出現します。近心根(きんしんこん)の2根管性(2こんかんせい)の頻度は、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど低くなります。

 

 

 こちらは、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど近遠心的圧平度(きんえんしんてきあっぺいど)が弱くなって近心面(きんしんめん)からみると根尖(こんせん)が尖る(とがる)ことによります。遠心根(えんしんこん)の遠心側(えんしんそく)へ傾斜も、遠心位(えんしんい)の大臼歯(だいきゅうし)ほど弱くなります。

 

 大臼歯(だいきゅうし)にみられる諸形態(しょけいたい)

①  カラベリー結節(けっせつ) (cusp of Carabelli,Carabelli’s cusp):

 上顎大臼歯舌側面(じょうがくだいきゅうしぜっそくめん)の近心隅角(きんしんぐうかく)に現れる結節(けっせつ)で、舌側(ぜっそく)の歯帯(したい)に由来します。

 

 上顎第一大臼歯(じょうがくだいいちだいきゅうし)で42%、上顎第二大臼歯(じょうがくだいにだいきゅうし)で2%、上顎第三大臼歯(じょうがくだいさんだいきゅうし)で1%、上顎第二乳臼歯(じょうがくだいににゅうきゅうし)では48,7%出現します。

 

  
   カラベリー結節(けっせつ)はモンゴロイドよりコーカソイドに多く現れます。

 

  プロトコヌーレ(protoconule):上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)の近心辺縁隆線(きんしんへんえんりゅうせん)に現れる結節(けっせつ)です。

 

 

③  メタコヌーレ(metaconule):上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)の遠心頬側咬頭(えんしんきょうそくこうとう)の中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)が中心溝付近(ちゅうしんこうふきん)でつくる結節(けっせつ)です。

 

 

④  ターナーの第五咬頭(だいごこうとう):上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)の遠心辺縁隆線(えんしんへんえんりゅうせん)に現れる結節(けっせつ)です。

 

 

⑤  臼傍結節(きゅうぼうけっせつ):近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)の頬側面(きょうそくめん)にみられる過剰結節(かじょうけっせつ)で、頬側(きょうそく)の歯帯(したい)に由来します。「Bolkの結節(けっせつ)」ともいわれます。

   上顎第二大臼歯(じょうがくだいにだいきゅうし)で2%ほどみられ、上顎第三大臼歯(じょうがくだいさんだいきゅうし)にも現れます。

 

 

⑥  プロトスタイリッド(protostylid):下顎第一大臼歯(かがくだいいちだいきゅうし)の近心頬側面(きんしんきょうそくめん)に約18%出現します。

   H氏によれば、下顎第二乳臼歯(かがくだいににゅうきゅうし)には33%出現するいわれています。

 

 

⑦  臼後結節(きゅうごけっせつ):第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)の遠心部(えんしんぶ)に現れる結節(けっせつ)です。

 

 

⑧  エナメル滴(じょう)(enamel drop):根分岐部(こんぶんきぶ)、根管突起(こんかんとっき)の先端あるいはエナメル質と全く関係ない歯根表面(しこんひょうめん)に出現する球形あるいは卵円形(らんえんけい)のエナメル質塊で、

 

  真珠に似ているためエナメル真珠ともよばれます。第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)で最も多く、次いで第二大臼歯(だいにだいきゅうし)で、

 

   第一大臼歯(だいいちだいきゅうし)にはほとんどみられません。上顎第三大臼歯(じょうがくだいさんだいきゅうし)では3%ほどです。

 

 

⑨  根間突起(こんかんとっき):下顎大臼歯(かがくだいきゅうし)の頬側歯頸部中央部(きょうそくしけいぶちゅうおうぶ)で近心根(きんしんこん)と遠心根(えんしんこん)の間にエナメル質が突出(とっしゅつ)していることで、エナメル突起(とっき)(enamel projection)ともいいます。

 

 

⑩  中心結節(ちゅうしんけっせつ)(central tubercle):臼歯(きゅうし)の咬合面中央(こうごうめんちゅうおう)にみられる異常結節(いじょうけっせつ)で、大きいものでは内部に歯髄腔(しずいくう)が突出します。

   上顎第三大臼歯(じょうがくだいさんだいきゅうし)では1%ほど出現します。

 

 

⑪  ドリオピテクス型:下顎大臼歯咬合面浮彫像(かがくだいきゅうしこうごうめんうきぼりぞう)の基本形態は5咬頭(5こうとう)で、咬頭(こうとう)の間を分ける咬合面溝(こうごうめんこう)の形態はY字形です。

 

  こちらの基本形態は中新世(ちゅうしんせい)から鮮新世(せんしんせい)にかけてヨーロッパ、アフリカおよびアジアに棲息(せいそく)していた化石類人猿(かせきるいじんえん)の一群である「ドリオピテクス」のすべての大臼歯(だいきゅうし)に認められるので、ドリオピテクス型と名づけられています。こちらドリオピテクス型の歯の出現頻度は、民族により異なります。

 

 

⑫  第六咬頭(だいろくこうとう):遠心咬頭(えんしんこうとう)と遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)の間にできる結節(けっせつ)で、下顎第一大臼歯(かがくだいいちだいきゅうし)に17,4%、下顎第二大臼歯(かがくだいにだいきゅうし)に17,6%、下顎第三大臼歯(かがくだいさんだいきゅうし)に20,7%出現します。

 

⑬  第七咬頭(だいななこうとう):近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)と遠心舌側咬頭(えんしんぜっそくこうとう)の間にできる結節(けっせつ)で、下顎第一大臼歯(かがくだいいちだいきゅうし)に5,7%出現します。

 

⑭  遠心頬側辺縁副結節(えんしんきょうそくへんえんふくけっせつ):遠心咬頭(えんしんこうとう)と第六咬頭(だいろくこうとう)の間にできる結節(けっせつ)で、遠心辺縁隆線上(えんしんへんえんりゅうせんじょう)に出現します。下顎第三大臼歯(かがくだいさんだいきゅうし)に多いです。

 

 

⑮  屈曲隆線(くっきょくりゅうせん): 近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)の中心咬合面隆線(ちゅうしんこうごうめんりゅうせん)が発達して中心溝(ちゅうしんこう)に向かう隆線(りゅうせん)で、途中で遠心方向(えんしんほうこう)に直角に曲がる形態をしています。下顎第一大臼歯(かがくだいいちだいきゅうし)に30%ほど出現します。

 

 

⑯  第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)の欠如(けつじょ):第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)は、18歳に萌出(ほうしゅつ)することから智歯(ちし)、親知らずともよばれます。第二大臼歯(だいにだいきゅうし)よりさらに退化傾向が強く、栓状歯(せんじょうし)、結節歯(けっせつし)となることがあるなど形態的な安定性に乏しく、下顎大臼歯(かがくだいきゅうし)では巨大歯(きょだいし)も出現します。

 

また、埋伏(まいふく)することがしばしばあり、半数近くは先天的(せんてんてき)に欠如(けつじょ)します。先天的欠如率(せんてんてきけつじょりつ)は上顎(じょうがく)では男性20%、女性28%、下顎(かがく)では男性16%、女性19%と全歯(ぜんし)のうちで最も高くなっています。

上下顎(じょうげがく)に4歯とも完全に揃った第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)をもつ日本人は男性64%、女性58%にすぎません。

 

 

 

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