こんにちは。きりん(@kirinaccount)です。
民法改正宅建
宅建試験 平成27年度(2015年度)過去問解いてみました。
民法改正後にどのような解釈ができるのか綴りました。
宅建資格を取得するにあたり過去問(たっけんかこもん)
を解いたところ
「解答を読んでもわかりにくい」
平成27年度(2015年度)、宅建過去問正解肢(せいかいし)がわからない、わかりにくい場面に
初学者の方でも役立ちそうな解説を
少し混じえています。
に続き
・正解問題肢
・改正民法肢
・民法改正後
を用いて解説しています。
宅建試験合格、受験対策の一助になれば幸いです。
目次
1. 問1 1-1 1-1
2. 問2 2-1 通謀虚偽表示 2-2 心裡留保
3. 問3 3-1 使用貸借
4. 問6・問8 4-1 民法370条 4-2 敷金
5. 問10・問12 5-1 相続に関するルール 5-2 賃貸人の地位の移転
民法改正 問1
問題1
1 債務の不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する旨
こちらの肢は新法においては正解ではないでしょうか。
旧167条1項
なぜなら
時効期間は、契約責任に準じて10年とされていました。
たとえば
新法は、新167条によって、「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」につき、新166条1項2号の定める普通時効期間を10年から20年に伸長しました。
民法改正 問2
問題2 Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。
2 善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。(正解肢)
こちらの肢は正解です。
なぜならCが善意だからです。通謀虚偽表示は変更ありません。
(虚偽表示)民法九十四条① 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
次に心裡留保の場合は
旧民法94条2項を適用していました。
Cが善意で足りるとしていました。
なぜなら旧93条には、効力を否定される意思表示を前提として新たに
法律上利害関係を有するに至った第三者の保護については規定が設けられていなかったからです。
さらに判例においては旧94条2項を類推適用するとしていましたが、新法では新93条2項が適用されました。
たとえば新93条2項は「前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」という第三者が保護されるための主観的要件が明文化されました。
民法改正 問3
問題3
AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物につき、(1)賃貸借契約を締結した場合と、(2)使用貸借契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Bが死亡した場合、(1)では契約は終了しないが、(2)では契約が終了する。
2 Bは、(1)では、甲建物のAの負担に属する必要費を支出したときは、Aに対しその償還を請求することができるが、(2)では、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。
3 AB間の契約は、(1)では諾成契約であり、(2)では要物契約である。
4 AはBに関して、甲建物の瑕疵について、(1)では担保責任を負う場合があるが、(2)では担保責任を負わない。(正解肢)
使用貸借について旧法・判例を含め新法が設けられました。
1 (1)①存続期間を定めた場合における期間の満了(新597条1項)
②期間を定めなかったものの、使用・収益の目的を定めた場合において、借主がその目的に従って使用・収益を終えたとき(同条2項)
③借主が死亡したとき(同条3項)
2 民法608条1項変更ありません。
3 諾成契約に変わりました。
なぜならこれは書面によらない贈与は、履行の終了前は解除できるとする贈与契約の規律(新549条・550条)と平仄をあわせたものです。
たとえば
新法は、使用貸借は当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、
相手方がその受け取った者を無償で使用・収益し、契約終了時に返還することを「約すること」によっ
てその効力が生じるとして、使用貸借を諾成契約としました。(新593条)
もっとも、貸主は借主が使用物を受け取るまでは、契約の解除をすることができる(新593条の2本文)。
しかし、書面による使用貸借は解除できない。(新593条の2ただし書)。
これは書面によらない贈与は、履行の終了前は解除できるとする贈与契約の規律(新549条・550条)と平仄をあわせたものです。
書面によらない贈与(新550条)に関する判例法理を参考にしつつ解釈できるのではないでしょう
か。
使用借権は不動産を目的とする場合にも登記することができず(不登3条)
対抗要件を備える手段がありません。(新605条)
新法は使用貸借の終了事由を、
(1)一定の事実の発生による終了と
(2)契約解除による終了の2つのカテゴリーに分けています。
(1)①存続期間を定めた場合における期間の満了(新597条1項)
②期間を定めなかったものの、使用・収益の目的を定めた場合において、借主がその目的に従って使用・収益を終えたとき(同条2項)
③借主が死亡したとき(同条3項)
次に
旧597条2項ただし書は
「当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる」
こちらが
新598条1項
「契約の解除をすることができる」
に変更されています。
(2)
①使用貸借における使用・収益の目的が定められている場合に、借主が当該目的に従って使用・収益するのに足りる期間を経過したときは、借主は契約解除をすることができる(新598条1項)
②当事者が使用貸借の期間も使用・収益の目的も定めなかったときは、貸主はいつでも契約解除をすることができる。(同条2項)さらに
③借主は存続期間や使用・収益の目的を定めた場合であっても、いつでも契約の解除をすることができる(同条3項)
③は新規律といえるのではないでしょうか。
なぜなら使用貸借はもっぱら使用借主の利益を目的とするものであるがゆえに、当然と考えることができるからです。
たとえば③の新法設立にいたった点が挙げられます。
民法改正 問6・問8
問題6
2 抵当不動産の被担保債権の主債務者は、抵当権消滅請求をすることはできないが、その債務について連帯保証をした者は、抵当権消滅請求をすることができる。(正解肢)
抵当権の効力の及ぶ範囲は新法が設けられました。
(抵当権の効力の及ぶ範囲)
旧民法
第三百七十条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りではない。
新法
第三百七十条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りではない。
問題8
(正解1)
ア マンションの賃貸借契約終了に伴う賃貸人の敷金返還債務と、賃借人の明渡債務は、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立つ。
イ 同時履行の関係に立ち不正解
ウ マンションの売買契約に基づく買主の売買代金支払債務と、売主の所有権移転登記の協力する債務は、特別の事情のない限り、同時履行の関係に立つ。
こちらは同時履行に関する問題ですが民法・敷金に関して新たに
新622条の2では敷金返還請求権の取り扱いが明文化されることになりました。
なぜなら敷金返還請求権は判例解釈により取り扱われていたからです。
たとえば敷金の定義については「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付される金銭」とされました。
つぎに、敷金返還請求権の発生時期として、①賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、②賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときを挙げています。(新第622条の2第1項)
・請求の範囲については、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額です。(新第622条の2第1項柱書)
問題9
(判決文)土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ることなく右土地を他に転貸しても、転貸について
賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が
民法第612条第2項により賃貸借を解除することができない場合において、賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても、これが賃借人の賃料不払等の債務不履行があるため賃貸人において
法定解除権の行使ができるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は、転借人に対して
右合意解除の効果を対抗することができず、したがって、転借人に対して賃貸土地の明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。
1 土地の賃借人が無断転貸した場合において賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない
(正解肢)
特段の事情があるため賃貸人が無断転貸を理由に賃貸借契約を解除できないときであっても、賃貸借契約を合意解除したときは、賃貸人は転借人に対して賃貸土地の明渡しを請求することができる。
民法改正 問10・問12
問題10 相続
1.不正解
民法第968-2
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
2.判例により不正解
3.判例により不正解
4.被相続人がした贈与が遺留分減殺請求により全部失効した場合、受贈者が贈与に基づいて目的物の占有を平穏かつ公然に20年間継続したとしてもその目的物を時効取得することはできない。(判例により正解)
相続につきましては
自筆証書遺言の方式が緩和されました。
なぜならこちらの相続法については、1980年(昭和55年)に改正されて以来、大きな見直しがされていませんでした。
一方、この間、我が国における平均寿命は延び、社会の高齢化が進展するなどの社会経済の変化が生じており、今回の改正では、このような変化に対応するために相続法に関するルールを大きく見直す必要があったからです。
たとえば現行法の規律
・財産目録は全文自書する必要がありました。
改正によるメリット
・パソコンで目録を作成
・通帳のコピーを添付
・自筆証書遺言の保管制度
手数料を収める必要があります。(2020年7月10(金)施行)
遺留分制度の見直し(2019年7月1日(月))
改正によるメリット
① 遺留分減殺請求の行使により共有関係が当然に生ずることを回避することができる。
② 遺贈や贈与の目的財産を受遺者等に与えたいという遺言者の意思を尊重することができる。
特別の寄与の制度の創設(2019年7月1日(月)施行)
問題12 民法・借地借家法
1 賃借権の登記をしない限り賃借人は賃借権を第三者に対抗することができない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該契約は無効である。(正解肢)
賃貸不動産の譲渡と賃貸人の地位の留保について
新法が設けられました。
なぜなら、これまでの判例による対応では、
近年の賃貸物件を小口化された共有持分権を取得した者(投資家)が賃貸人の地位まで引き受けることになるからです。
たとえば賃借人に対する修繕義務や敷金返還請求義務を負うといったリスクを避けるためです。
新法605条の2第2項前段は、不動産の賃借権が対抗力を備えている場合において、その不動産が譲渡されたときでも、譲渡人と譲受人が、
・賃貸人の地位を譲渡人に留保する旨
および
・その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨を合意すれば
賃貸人の地位は譲受人に移転しないと規定しました。
さらに合意による賃貸人の地位の移転に関する
新法が設けられました。
なぜなら旧法下では判例法理だったからです。
たとえば、(新法539条の2)では合意によって契約上の地位を移転するには契約の相手方の承諾が必要である旨が明文化されています。
こちらは(新法539条の2)特則として位置づけられていますが賃貸不動産の譲渡の際に、譲渡人と譲受人は合意によって賃貸人の地位を移転することができ、賃借人の承諾は不要であると規定しました。(新605条の3前段)
参考文献
;民法改正Before/After