歯の解剖学・ 歯・歯列の異常/歯の形態

こんにちは。きりん(@kirinaccount)です。

参照文献(歯の解剖学/歯科技工)です。

 

         みだし

     1.咬合(こうごう)と歯列(しれつ)の異常

     2.歯の数と萌出(ほうしゅつ)の異常

     3.歯の形態異常(けいたいいじょう)

 

       

 


歯の異常


人類の歯にはその数と形態においてさまざまな異常が出現します。


咬合(こうごう)と歯列(しれつ)の異常

咬合(こうごう)の異常


1. 上下顎中切歯(じょげがくちゅうせっし)の位置関係

上下顎中切歯(じょうげがくちゅうせっし)の位置関係は個体によって変異し多くの種類があります。上下顎中切歯じょうげがくちゅうせっし)の位置関係は,Welckerが5種に分類し、その後臨床的にいくつかの分類が加わりました。

 

 


① 鋏状咬合(はさみじょうこうごう)(psalidodontia):上顎切歯(じょうがくせっし)が下顎切歯(かがくせっし)の歯冠(しかん)の切縁(せつえん)1/3を覆って下顎切歯(かがくせっし)の唇側面(しんそくめん)の前方に出ている咬合(こうごう)で、現代人における正常咬合(せいじょうこうごう)です。人類に特有な咬合状態(こうごうじょうたい)であり、下顎の急速な退化によって生じたものです。

 

 

 

② 鉗子咬合(かんしこうごう)(labidontia):上下顎切歯(じょうげがくせっし)の切縁(せつえん)がお互いに相接する場合をいい、切端咬合(せったんこうごう)・毛抜き状咬合ともいわれます。
石器時代の人やオーストラリア原住民にはこの咬合型(こうごうがた)が多いです。縄文時代のヒトもこの咬合と考えられていたが、最近の研究では咬耗(こうもう)の少ない若年者(じゃくねんしゃ)の咬合は鋏状咬合(はさみじょうこうごう)であることから、成人における鉗子咬合(かんしこうごう)は、過剰(かじょうな)な咬耗(こうもう)によると報告されています。

 

 


③ 過蓋咬合(かがいこうごう)(over bite):上下の歯列弓(しれつきゅう)が前歯部(ぜんしぶ)で著しくかみ合っている咬合状態をいいます。


④ 屋根咬合(やねこうごう)(over jet):上顎切歯(じょうがくせっし)が前方に向かって傾斜し、屋根のような形で下顎切歯(かがくせっし)の切縁(せつえん)より前方に突出している咬合状態(こうごうじょうたい)をいいます。


水平に近くなる場合もあります。モンゴロイドに比較的多いです。

 

 


⑤ 離開咬合(りかいこうごう)(open bite):臼歯(きゅうし)が咬合(こうごう)している状態で、上下の切歯(せっし)が前歯部(ぜんしぶ)の上下顎歯列間(じょうげがくしれつかん)に空隙(くうげき)が存在する場合をいいます。ときには第一小臼歯部(だいいちしょうきゅうしぶ)まで離開(りかい)しいることがあります。開咬(かいこう)ともいいます。


⑥ 反対咬合(はんたいこうごう)(mandibular overjet):下顎切歯(かがくせっし)が上顎切歯(じょうがくせっし)の前方に位置する咬合状態(こうごうじょうたい)をいいます。

 

 

⑦ 後退咬合(こうたいこうごう)(disto-occlusion):下顎(かがく)が著しく短縮(たんしゅく)しているために、下顎切歯(かがくせっし)が上顎切歯(じょうがくせっし)よりも2~10mm後方にあり、上顎切歯(じょうがくせっし)によって覆われていない状態をいいます。

 

 

 

⑧ 交叉咬合(こうさこうごう) (posterior cross bite):上下歯列弓(じょうげしれつきゅう)のいずれかが左右に偏位(へんい)し、上下の咬合関係(こうごうかんけいが一部で逆になっている咬合状態(こうごうじょうたい)をいいます。下顎歯列弓(かがくしれつきゅう)の一部が上顎歯列弓(じょうがくしれつきゅう)の外側(がいそく)に転位(てんい)し、下顎歯(かがくし)の頬側咬頭(きょうそくこうとう)が上顎歯(じょうがくし)の頬側咬頭(きょうそくこうとう)より、頬側(きょうそく)に出ます。

 

 上下顎臼歯(じょうげがくきゅうし)の位置関係

 Angleは、上顎第一大臼歯(じょうがくだいいちだいきゅうし)に対する下顎第一大臼歯(かがくだいいちだいきゅうし)の近遠心的位置関係(きんえんしんてきいちかんけい)から、上顎歯列弓(じょうがくしれつきゅう)と下顎歯列弓(かがくしれつきゅう)の位置関係を次のように分類しました。

 

 


こちらの分類法は、上顎歯列弓(じょうがくしれつきゅう)に異常がないという前提にたていること、上顎第一大臼歯(じょうがくだいいちだいきゅうし)の位置異常がないという前提にたっていること、
矢状方向(しじょうほうこう)のみの位置関係で垂直的ならびに側方的(そくほうてき)位置関係の異常を考慮していないことなどさまざまな不備があるが簡便なことから広く用いられています。


① アングルⅠ級:上顎第一大臼歯(じょうがくだいいちだいっきゅうし)の近心頬側咬頭(きんしんきょうそくこうとう)の主隆線(しゅりゅうせん)が、下顎大臼歯(かがくだいきゅうし)の頬側面溝(きょうそくめんこう)と咬合(こうごう)する場合で、上下顎歯列弓(じょうがくしれつきゅう)の正常な近遠心的位置関係(きんえんしんてきかんけい)です。

 


② アングルII級:正常より半咬頭違心(はんこうとうえんしん)で咬合(こうごう)する場合をいいます。両側性(りょうそくせい)の下顎遠心咬合(かがくえんしんこうごう)で上顎前歯(じょうがくぜんし)の前突(ぜんとつ)を伴うものを第1類、両側性(りょうそくせい)の下顎遠心咬合(かがくえんしんこうごう)で上顎前歯(じょうがくぜんし)の後退を伴うものを第2類といいます。


③ アングルⅢ級:正常より半咬頭近心(はんこうとうきんしん)で咬合(こうごう)する場合をいいます。

 

歯列の異常
 歯列弓形態(しれつきゅうけいたい)の異常

Broca・Topinard や Thompson による楕円形(だえんけい)・放物線形(ほうしゃせんけい)・U字形(Uじがた)・帯円形(たいえんがた)・帯円方形(たいえんほうけい)・方形(ほうけい)・帯円(たいえん)V字形などの正常歯列弓形態(せいじょうしれつきゅうけいたい)の分類には含まれない異常歯列弓(いじょうしれつきゅう)として、狭窄歯列弓(きょうさくしれつきゅう)や空隙歯列弓(くうげきしれつきゅう)があります。

 

① 狭窄歯列弓(きょうさくしれつきゅう)(contracted dental arch):小臼歯(しょうきゅうし)や大臼歯(だいきゅうし)が舌側(ぜっそく)に転位(てんい)し、歯列弓(しれつきゅう)の幅が狭くなったもので、犬歯(けんし)・小臼歯(しょうきゅうし)が舌側(ぜっそく)に転位(てんい)するV字形歯列弓(V-shaped dental arch)・小臼歯(しょうきゅうし)のみが舌側(ぜっそく)に転位(てんい)し馬の鞍(くら)のように凹んで(へこんで)ひょうたん状にみえる鞍状歯列弓(くらじょうしれつきゅう)があります。

 

② 空隙歯列弓 (くうげきしれつきゅう)(spaced dental arch):上下顎歯列弓(じょうげがくしれつきゅう)ともに多数の歯隙(しげき)が存在するもので大きな顎骨(がっこつ)に小さな歯が配列している場合にみられます。

 


上下歯列弓(じょうげしれつきゅう)関係の異常
上下歯列弓(じょうげしれつきゅう)関係の異常には近遠心的関係(きんえんしんてきかんけい)、水平関係(すいへいかんけい)、垂直関係(すいちょくかんけい)の異常があります。

 


上記の上下歯列弓(じょうげしれつきゅう)関係の異常は、歯性(しせい)や機能性(きのうせい)・骨格性(こっかくせい)のものがあり、治療にあたっては鑑別診断(かんべつしんだん)が重要となります。

 

 

① 近遠心的(きんえんしんてき)関係の異常:上顎歯列弓(じょうがくしれつきゅう)の近遠心的位置関係(きんえんしんてきいちかんけい)が正常な場合に下顎歯列弓(かがくしれつきゅう)が後方位(こうほうい)をとります。または下顎歯列弓(かがくしれつきゅう)の近遠心的(きんえんしんてき)位置関係が正常な場合に上顎歯列弓(じょうがくしれつきゅう)が前方位(ぜんぽうい)をとる上顎前突(じょうがくぜんとく)、および上顎歯列弓(じょうがくしれつきゅう)の近遠心的(きんえんしんてき)位置関係が正常な場合に下顎歯列弓(かがくしれつきゅう)が前方位(ぜんぽうい)をとる下顎前突(かがくぜんとつ)があります。上下顎(じょうげがく)ともに突出(とっしゅつ)する上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)もあります。

 

 

 

② 水平関係の異常:交叉咬合(こうさこうごう)、上顎歯列弓(じょうがくしれつきゅう)の狭窄(きょうさく)などにより両側臼歯部(りょうそくきゅうしぶ)が反対咬合(はんたいこうごう)になる両側性臼歯部交叉咬合(りょうそくせいきゅうしぶこうさこうごう)と、逆に上顎臼歯部舌側咬頭(じょうがくきゅうしぶぜっそくこうとう)がすべて臼歯部(きゅうしぶ)の頬側(きょうそく)に鋏状(はさみじょう)に咬合(こうごう)する両側性臼歯部狭窄咬合(りょうそくせいきゅうしぶきょうさくこうごう)があります。


③ 垂直関係の異常:過蓋咬合(かがいこうごう)・離開咬合(りかいこうごう)があります。

歯の数と萌出(ほうしゅつ)の異常


歯数(しすう)の異常
歯数(しすう)の異常には歯数過剰(しすうかじょう)と歯数不足(しすうふそく)があります。

 

歯数過剰 (しすうかじょう)
歯数過剰(しすうかじょう)は、歯種(ししゅ)の定数以上の歯が生えたもので、形成時になんらかの原因で歯堤(してい)の延長や余分な歯歴(しれき)の発生、あるいは歯胚(しはい)の異常分裂などの一過性の局所的変化が起こったものと考えられ正常歯型(せいじょうしけい)と異常歯型(いじょうしけい)(円錐歯(えんすいし)・拶状歯(さつじょうし)・結節歯(けっせつし)など)があります。歯数過剰(しすうかじょう)は、歯列(しれつ)の全域にわたって同じ頻度、同じ形式で現れるものでなく、好発部位(こうはつぶい)と一定の様式があります。

 


男性における過剰歯(かじょうし)の出現頻度は、女性よりはるかに高率です。最も頻度が高いのは上顎切歯部(じょうがくせっしぶ)に出現する過剰歯(かじょうし)で、全過剰歯(ぜんかじょうし)の約85%がこちらの部位に出現します。 こちらの部位に出現する過剰歯(かじょうし)はつぎの2つに分けられます。

 


① 正中歯(せいちゅうし):上顎(じょうがく)の左右中切歯(さゆうちゅうせっし)の間、またはそちらの舌側(ぜっそく)に現れるものです。そちらの頻度は埋伏(まいふく)しているものまで含めると約3%です。

 


②  重複側切歯(じゅうふくそくせっし):側切歯部(そくせっしぶ)に出現するもので、正中歯(せいちゅうし)に比較するとはるかに少ないです。

 

上顎切歯部(じょうがくせっしぶ)についで過剰歯(かじょうし)が多い部位は上顎大臼歯部(じょうがくだいきゅうしぶ)ですが、そちら出現頻度はきわめて低く主につぎの2つがあります。

 


①  臼傍歯(きゅうぼうし):大臼歯(だいきゅうし)の近心頬側(きんしんきょうそく)に現れる過剰歯(かじょうし)で、大部分は第二および第三大臼歯部に出現します。
第一大臼歯部(だいいちだいきゅうし)に出現することはきわめてまれです。

 

 

 

 

②  臼後歯(きゅうごし):第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)の遠心側(えんしんそく)に出現する過剰歯(かじょうし)で、矮小歯(わいしょうし)が多いです。上顎(じょうがく)ではまれに第四大臼歯も出現する.

 

 

 

歯数不足(しすうふそく)

 


歯数不足は歯数過剰(しすうかじょう)よりもはるかに頻度が高く、全無歯症(ぜんむししょう)と部分的無歯症(ぶぶんてきむししょう)に分けられます。伴性遺伝(はんせいいでん)によって起こる全無歯症(ぜんむししょう)は、外胚葉性組織(がいはいようせいそしき)である毛髪・脂腺(しせん)・汗腺(かんせん)などの形成不全と同様に永久歯歯胚(えいきゅうししはい)の形成不全が起こるもので、乳歯(にゅうし)の数は正常であっても永久歯が多数欠損(たすうけっそん)します。

 

一方、部分的無歯症(ぶぶんてきむししょう)とは、歯堤(してい)が短くなり、発生する歯胚(しはい)の数が減ることによって歯数(しすう)が減少します。同一歯種内(どういつししゅない)では近心側(きんしんそく)より遠心側(えんしんそく)の歯のほうが欠如(けつじょ)する頻度が高く、近心側(きんしんそく)の歯が欠如(けつじょ)している場合はまとんど遠心側(えんしんそく)の歯も欠如(けつじょ)します。ただし、下顎切歯部(かがくせっしぶ)では中切歯(ちゅうせっし)および側切歯(そくせっし)ともほぼ同じ頻度で欠如(けつじょ)するか、むしろ近心側(きんしんそく)の中切歯(ちゅうせっし)のほうが欠如率(けつじょりつ)が高いです。

 

 

歯の欠如率(けつじょりつ)

 

最も欠如(けつじょ)する歯は上下顎第三大臼歯(じょうげがくだいさんだいきゅうし)で、M氏の調査によれば男性の36%・女性の42%において1本以上の第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)の欠如(けつじょ)が認められ、4歯欠如が4.7%、3歯欠如が3.9%、 2欠如が14.3%、1歯欠如が13.2%です。

 


上下顎(じょうげがく)でわけた欠如率(けつじょりつ)は、男性では上顎37.2%、下顎23.1%、女性では上顎35.0%, 下顎25.5%であり、下顎(かがく)よりも上顎(じょうがく)のほうが高率であるが 、男女差はないです。第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)の欠如(けつじょ)はほとんどが左右対称的に生じており、非対称的(ひたいしょうてき)に生じるのは20%ほどです。

 


第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)に次いで欠如(けつじょ)が多い歯は下顎第二小臼歯 19.5%で、以下上顎側切歯17.7%、上顎第二小臼歯 14.5%、下顎中切歯13.6%、下顎側切歯10.9%
となっており、上下顎(じょうげがく)を比較すると下顎(かがく)のほうがやや高率です。

 

 

 

 


一方、上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)、 上下顎第一大臼歯(じょげがくだいいちだいきゅうし)は、 欠如(けつじょ)することが最も少ない歯です。

 

 

 


 系統発生学的(けいとうはっせいがくてき)にみると人類の歯の退化は第一生歯列(だいいちせいしれつ)・第二生歯列(だいにせいしれつ)ともにそちらの遠心端(えんしんたん)から近心(きんしん)のほうに向かって起こると考えられています。こちらの現象を末端退化(まったんたいか)といいます。

 

 


第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)と第二小臼歯(だいにしょうきゅうし)に歯数不足(しすうふそく)が多いのは、こちらの2つの歯がそれぞれ第一生歯列(だいいちせいしれつ)および第二生歯列(だいにせいしれつ)の最も遠心端(えんしんたん)に存在しているためと考えられます。

 


なお、上顎乳前歯(じょうがくにゅうぜんし)に癒合歯(ゆごうし)が出現した場合、そちらの50%で代生歯(だいせいし)である上顎側切歯(じょうがくそくせっし)の欠如(けつじょ)がみられます。

 

 


 萌出(ほうしゅつ)の異常
 乳歯(にゅうし)の晩期残存(ばんきざんぞん)

 


 通常、代生歯(だいせいし)が萌出(ほうしゅつ)を開始して乳歯(にゅうし)と接触するようになると、乳歯根(にゅうしこん)が吸収しはじめ、歯根(しこん)が完全に吸収されると乳歯(にゅうし)は自然に脱落して代わりに代生歯(だいせいし)が萌出します。

 

 


しかし、ときには脱落すべき標準時期をはるかに過ぎてもなお、乳歯(にゅうし)が歯槽内(しそうない)に残存していることがあります。こちらような状態を乳歯(にゅうし)の晩期残存(ばんきざんぞん)といいます。原因は代生歯(だいせいし)による機械的圧迫の減弱(げんじゃく)または欠如(けつじょ)によるものと説明されており、代生歯(だいせいし)の欠如・代生歯の転位(てんい)・代生歯(だいせいし)の未萌出(みほうしゅつ)が考えられます。

 


乳歯の晩期残存の頻度
 O氏の調査によれば、乳歯(にゅうし)の晩期残存(ばんきざんぞん)の大多数例(89.2%)は、代生歯(だいせいし)の欠如(けつじょ)によるものである(九州歯科学会雑誌1979)
とくに第二乳臼歯(だいににゅうきゅうし)・下顎乳中切歯(かがくにゅうちゅうせっし)・側切歯(そくせっし)・上顎乳側切歯(じょうがくにゅうそくせっし)の残存は、ほとんどが代生歯欠如(だいせいしけつじょ)の結果です。

 

 

一方、代生歯(だいせいし)が存在していてもそちらの歯が乳歯(にゅうし)の方向に萌出(ほうしゅつ)しない場合が7.4%、あるいは代生歯(だいせいし)が正常な位置にあってもなんらかの原因で萌出(ほうしゅつ)せずに顎骨内(がっこつない)に埋伏(まいふく)している場合が3.4%あります。


 乳歯(にゅうし)の晩期残存(ばんきざんぞん)の頻度は上顎(じょうがく)および下顎第二乳臼歯(かがくだいににゅうきゅうし)が最も多く、ついで上顎乳犬歯(じょうがくにゅうけんし)、下顎乳中切歯(かがくにゅうちゅうせっし)の順で、上顎乳中切歯(じょうがくにゅうちゅうせっし)の残存はほとんどみられません。

 

 


 なお、乳歯(にゅうし)の晩期残存(ばんきざんそん)の頻度は年齢とともに減少しているが、こちらは残存乳歯(ざんぞんにゅうし)は自然に放置しておいても一定の年齢に達すると脱落(だつらく)することが多いためです。ただし、O氏によれば、40歳以上で乳歯(にゅうし)を所有している例もあり、最高齢は75 歳と報告しています。

 

萌出時期(ほうしゅつじき)の異常
 萌出時期(ほうしゅつじき)の異常には、早期萌出(そうきほうしゅつ)と萌出遅延(ほうしゅつちえん)があります。早期萌出(そうきほうしゅつ)とは、出生時(しゅっせいじ)にすでに歯が萌出(ほうしゅつ)していることで、こちらを先天歯(せんてんし)(meonatal tooth)といい0.1%ほどです。

 


一方、萌出遅延(ほうちゅつちえん)を埋伏歯(まいふくし)(embedded tooth)といい、下顎第二大臼歯(かがくだいにだいきゅうし)、上顎第三大臼歯(じょうがくだいさんだいきゅうし)・上顎犬歯(じょうがくけんし)に多くみられ、乳歯(にゅうし)ではまれです。

 


M氏の調査によれば、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)が4歯とも埋伏(まいふく)している割合は、男性24.5%, に女性28.6%です。埋伏歯(まいふくし)は、埋伏(まいふく)の状態によって完全埋伏歯(かんぜんまいふくし)と不完全理伏歯(ふかんぜんまいふくし)に区別され、不完全埋伏歯(ふかんぜんまいふくし)は齲蝕(うしょく)や智歯周囲炎(ちししゅういえん)を起こしやすいです。

 

多数歯(たすうし)の埋伏(まいふく)は第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)の埋伏(まいふく)を除き、鎖骨頭蓋異骨症(さこつずがいいこつしょう)など病的なことが多いといわれています。

 

 

萌出場所(ほうしゅつばしょ)の異常
本来萌出(ほうしゅつ)すべき歯列(しれつ)を大きく離れて萌出(ほうしゅつ)することを異所性萌出(いしょせいほうしゅつ) (ectopic eruption)といいます。

 


上顎犬歯(じょうがくけんし)が鼻腔(びくう)や上顎洞(じょうがくどう)に、上顎第三大臼歯(じょうがくだいさんだいきゅうし)が上顎結節(じょうがくけっせつ)や筋突起(きんとっき)に萌出(ほうしゅつ)することなどがあります。

 


① 転位(てんい)(malposition):歯列弓(しれつきゅう)からみて口腔前庭側(こうくうぜんていそく)または舌側(ぜっそく)に移動して萌出(ほうしゅつ)することをいいます。

 


② 移転(いてん)(transposition):隣接する2個の歯が互いに萌出位置(ほうしゅついち)を交換している場合をいいます。

 


上顎犬歯(じょうがくけんし)と第一小臼歯(だいいちしょうきゅうし)・上顎側切歯(じょうがくそくせっし)と犬歯(けんし)の間にみられることが多いです。

 

 

③高位(こうい)・低位(ていい):咬合線(こうごうせん)をこえて萌出(ほうしゅつ
)した歯を高位(こうい)、咬合線(こうごうせん)に達しない歯の状態を低位(ていい)といいます。いわゆる八重歯(やえば)は「上顎犬歯(じょうがくけんし)の低位側転位(ていいそくてんい)」と表現します。

 

 

④ 叢生(そうせい) (crowding):数本の歯が唇側(しんそく)や舌側(ぜっそく)に転位(てんい)あるいは傾斜して重なり、乱杭状(らんぐいじょう)に配列していることをいいます。
前歯部(ぜんしぶ)に多くみられ、歯の大きさと顎の大きさの不調和や臼歯の近心転位(きんしんてんい)によって起きます。

 

 

 

 歯の形態の異常

歯の大きさの異常
歯は正常なものでも人種差・個人差があるので、歯の大きさのみで異常と判定することは難しいです。通常は1本から数本の歯の大きさが異常であることが多く遺伝的要因があると考えられています。

 

 

 

下垂体性巨人症(かすいたいきょじんしょう)の場合、顎内(がくない)のすべての歯が異常に大きい場合があります。こちらを巨大歯といいます。また切歯(せっし)や犬歯(けんし)がほかの歯に比べて異常に大きい場合や歯間(しかん)と歯根(しこん)がともに大きい場合を仮性巨大歯(かせいきょだいし)といいます。歯根(しこん)のみが長い長根歯(ちょうこんし)と区別します。

 

 


 一方、歯の大きさが平均より異常に小さいものを矮小歯(わいしょうし)といいます。 下垂体性小人症(かすいたいせいしょうじんしょう)ように、顎内(がくない)のすべての歯が異常に小さい場合を真性矮小歯(しんせいわいしょうし)、上顎側切歯(じょうがくそくせっし)や上顎第三大臼歯(じょうがくだいさんだいきゅうし)によくみられる退化形(たいかけい)の円錐歯(えんすいし)のように形の異常を伴う場合を仮性矮小歯(かせいわいしょうし)といいます。

 

 

歯の形態の異常
ヒトの歯に現れる形態の異常の種類は多種多様で、人種差も認められます。


こちらでは、歯冠(しかん)に現れる異常(結節)(けっせつ)と歯根(しこん)に現れる異常に分けて述べます。

 

歯冠(しかん)の異常(結節)

① 切歯結節(せっしけっせつ):上顎切歯(じょうがくせっし)の基底結節(きていけっせつ)が著しくしく突出(とっしゅつ)・隆起(りゅうき)したものです。

 

② 犬歯結節(けんしけっせつ):上顎犬歯(じょうがくけんし)の基底結節(きていけっせつ)が著しく突出(とっしゅつ)・隆起(りゅうき)したものです。

 

③ 中心結節(ちゅうしんけっせつ):上下顎小臼歯(じょうげがくしょうきゅうし)および大臼歯咬合面(だいきゅうしこうごうめん)の中央に現れる円錐状(えんすいじょう)の結節(けっせつ)です。

 


こちらの結節は咬合面中央に突出しているため咀嚼(そしゃく)により容易に破折(はせつ)し, 象牙質(ぞうげしつ)や歯髄(しずい)が露出(ろしゅつ)することもあるので臨床上注意しなければならないです。S氏によれば中心結節(ちゅうしんけっせつ)の頻度は第二小臼歯(だいにしょうきゅうし)が最も高率で、上顎1.9%・下顎 3.5%であり、ついで第三大臼歯に多いです。


④ カラベリー結節(けっせつ):上顎大臼歯(じょうがくだいきゅうし)・上顎乳臼歯(じょうがくにゅうきゅうし)の近心舌側咬頭(きんしんぜっそくこうとう)の舌面近心(ぜつめんきんしん)に現れます結節で、コーカソイド(白色人種)に多く、ネグロイド(黒色人種)には少ないです。

 


SA氏によれば、日本人の出現頻度は上顎第一大臼歯(じょうがくだいいちだいきゅうし)では男性 28%・女性 20%・第二大臼歯(だいにだいきゅうし)では男女とも3%で、第一大臼歯(だいいちだいきゅうし)のほうがはるかに高率です。また、H氏によれば乳臼歯(にゅうきゅうし)における出現頻度は、痕跡程度(こんせきていど)のものを含めて第一乳臼歯(だいいちにゅうきゅうし)において 11%、第二乳臼歯(だいににゅうきゅうし)では 49%です。

 

 


⑤ 臼傍結節(きゅうぼうけっせつ):大臼歯(だいきゅうし)の頬側面近心部(きょうそくめんきんしんぶ)にみられる結節(けっせつ)です。
きわめてまれですが、小臼歯や乳臼歯に出現することもあります。
上顎第一大臼歯では0.1% 程度、第二・第三大臼歯では0.5~1.0%出現します。

 

 


⑥ 臼後結節(きゅうごけっせつ):第三大臼歯の遠心面(えんしんめん)にみられる異常結節(いじょうけっせつ)で、 1.0~1.5%認められます。

 

 


⑦ プロトスタイリッド:下顎大臼歯(かがくだいきゅうし)および乳臼歯の近心頬側咬頭頬側面(きんしんきょうそくこうとうきょうそくめん)に現れます、小さな結節で、頬側面満(きょうそくめんこう)に近接しています。 SZ氏らによれば、 出現頻度は下顎第一大臼歯18%・第二大臼歯3%・第三大臼歯6% であり、第一大臼歯がはるかに高率です。


また、H氏によれば、第二乳臼歯の出現頻度は33%であり、永久歯よりも効率です。

 

 

 

 

⑧ エナメル滴(じょう):大臼間の歯頸部(しけいぶ)や歯根部(しこんぶ)にみられる1~2mm の半球状のエナメル質の塊で、大きいものは象牙質(ぞうげしつ)だけでなく歯髄(しずい)も入れています。上顎第三大白歯の歯根分岐部(しこんぶんきぶ)に多くみられます。

 

 


歯根(しこん)の異常
歯根(しこん)の異常は、臨床では根管治療(こんかんちりょう)や抜歯(ばっし)などのときに考慮する必要があります。


歯根(しこん)の異常には次のようなものがあります。

 


① 過剰根(かじょうこん)(additional root):すべての永久歯で報告されていますが、日本人で頻度が高いのは下顎第一大臼歯の3根(20%、遠心舌側根)、下顎第三大臼歯の3根(11%)、上顎第三大臼歯の4根(5%)です。

 


その他、下顎犬歯の2根(0.4%)、下顎第二小臼歯の2根(7%)、上顎小臼歯の3根(1%)、上顎第二大臼歯の4根(1%)などがあります。歯冠(しかん)の過剰結節(かじょうけっせつ)がよく発達すると、そちらに対応して歯根(しこん)でも過剰根(かじょうこん)が存在することがあります。

 

 

② 台状根(だいじょうこん) (prism shaped root):上顎大臼歯、まれに上顎小臼歯にみられるもので、 3根が根尖部(こんせんぶ)まで分岐せず切株状(きりかぶじょう)になり、根尖部(こんせんぶ)のみが離開しているものです。こちらの形態の歯は広い歯髄腔(しずいくう)をもっているため、広髄歯(こうずいくう)(taurodont)ともよばれます。

 

 

 


③ 樋状根(おけじょうこん)(gutter shaped root):下顎大臼歯の近心根(きんしんこん)と遠心根(えんしんこん)が頬側面(きょうそくめん)で癒合(ゆごう)して1根になったもので、舌側面(ぜっそくめん)には深い溝ができます。N氏によれば、第二大臼歯(だいにだいきゅうし)で30%,第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)で10%に認められます。

 

 

 


④ 癒着歯(ゆちゃくし):2個以上の歯が象牙質形成後(ぞうげしつけいせいご)にセメント質によって結びつけられたもので、歯髄(しずい)はお互いに完全に分離しています。

 

 


⑤ 癒合歯(ゆごうし):歯の形成時に2個以上の歯胚(しはい)が結合して発育したもので、そちらの形成期により歯冠(しかん)の一部のみが分離したもの、歯冠(しかん)は完全に分離し歯根(しこん)のみが共通などさまざまな段階があります。少なくとも歯根の一部が共通の歯髄(しずい)や象牙質(ぞうげしつ)をもちます。

 

 


好発部位は前歯部(ぜんしぶ)に限られており、とくに下顎中切歯と側切歯・側切歯と犬歯の癒合(ゆごう)が最も多いが、そちらの出現率は0.3%程度です。上顎前歯(じょうがくぜんし)にみられることはまれです。

 

 

 


⑥ 双生歯(そうせいし):正常歯胚(せいじょうしはい)と過剰歯胚(かじょうしはい)が結合して発育したもので、癒合歯(ゆごうし)と同様、共通の歯髄(しずい)や象牙質(ぞうげしつ)をもっています。

 

 

 


⑦ 彎曲(わんきょく)と屈曲(くっきょく):一般に歯根(しこん)は遠心方向(えんしんほうこう)に彎曲する傾向にありますが、切歯(せっし)・犬歯(けんし)では近心(きんしん)に彎曲することやS字形に彎曲(わんきょく)することがあります。 また、上顎中切歯(じょうがくちゅうせっし)では歯根中央部(しこんちゅうおうぶ)で唇側(しんそく)や遠心(えんしん)に90°近く屈曲することがあります。

 

 

体調に気を付けて

合格まで頑張って下さい。

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